「ペヤング事件」とは、いったい何だったのか 0.00025%の確率が問い掛けた教訓

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国民生活センターが今年1月に発表した「食品の異物混入に関する相談の概要」によると、食品の異物混入に関する相談は2009年度から2015年1月10日までに約1万6000件寄せられた。2014年の詳細でみると、「ゴキブリ、ゴキブリの足など」が2.6%で、「ハエ、ハエの幼虫など」も1.7%、「ゴキブリやハエ以外の虫」は14.3%と多い。これらを除くと「毛髪や体毛など」が8.0%となっている。

ただし、たとえば外食時に髪の毛が混入していたとしても、店員にはいわず取り除くだけで済ませるケースが大半だろう。たとえ店員に伝えたとしても国民生活センターへの相談にまで至るケースは多くないと思われる。もしかすると虫の混入であっても、気づかないか、通達しないことがほとんどかもしれない。

「頻発するから許すべきだ」と言いたいわけではない。良くも悪くも、食の現場には異物混入があふれていることを示したかったにすぎない。

おそらく、異物混入事件はこれからも起きるだろうし、実際にペヤング問題以降も発生している。消費者としては、凡庸な結論なれど、外部に食品製造を委ねている以上、リスクが存在すると認識したうえで、健康被害を広げないよう購入時のレシートを保管し、食の記録をつけるなどの防御策を講じるほかない。

リスクを減らしながら価格を維持できるか

②生産者としての教訓

旧アクリフーズの冷凍食品農薬混入事件でも、問題後に工程ラインの大幅な改善が実施された。事件後の同工場については、ほとんど報道されていないものの、事件前に5台だった監視カメラは169台にまで増え、今では死角が消えるまで徹底した管理工場に”生まれ変わって”いる(日本経済新聞2014年12月16日)。

リスクをゼロにしようと思えば、どこまでもコストは膨らんでいく。せっかく海外よりも日本製の信頼がかろうじて高い状況にあっても、最終商品の価格が消費者に敬遠されるほど高価になってはいけないから、ここに二律背反がある。生産者としては、異物混入などの事件を最小化する努力は当然として、消費者へのアピールなども必要になってくるだろう。

たとえば、味の素冷凍食品では群馬県の工場を「見える化」した。これは一般消費者の工場見学を可能にしたもので、規定通路からは透明ガラス越しに生産工程を確認できる。通路から見えないところで不正が起きる可能性を否定するために、同工場ではそれらの箇所を監視カメラで確認できる徹底ぶりだ。

消費者の視線を使い、同時に作業員の意識向上も努めていく。言うは易く、行うは難し。実際には悩ましい問題が山積している。同時に安価なコストを武器にアジア勢の攻勢は止まるところを知らない。もしかすると、ペヤング問題が投げかけたのは、情報高速伝達時代における、生産者のあり方だったのかもしれない。
 

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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