現時点で参照できるのは、5月13日発表の見通しのみである。ただし、その数字は前述のように7、8月だけに関するものであり、その後の供給がどうなるのかはわからない。そこで以下では、次のように考えることとしよう。
月間最大需要の移動平均が5000万キロワットを継続的に下回っているのは、リーマンショック直後の08年11月から09年12月の間だ。この間の鉱工業生産指数の平均値は82・3であり、10年1~12月の平均値94・6より13・0%低い。また、月間最大需要の移動平均が5200万キロワットを継続的に下回っているのは、08年10月から10年6月の間だ。この間の鉱工業生産指数の平均値は86・7であり、10年平均値より8・4%低い。したがって、今後の電力供給の制約は、生産活動に対して制約条件になると考えられる。
月間最大需要の移動平均と鉱工業生産指数との関係が過去と同じであるとすれば、次のように結論することが可能だろう。仮に今後の電力供給上限が5000万キロワットであれば、今後の鉱工業生産指数は10年平均値より13・0%低下する。5200万キロワットなら8・4%ほど低い水準で頭打ちになる。
つまり生産活動は、夏前には生産設備の修復により拡大する。しかし、7、8月には電力制約によって生産がかなり落ち込む。秋には電力制約が緩和され、また生産設備の修復も進むので、生産が拡大する。しかし、冬季に入ると暖房需要の増加によって再び電力制約がかかる。
制約は全国的な広がりになる
以上で考えたのは、東京電力管内である。日本全体を考えるには、他の地域を検討する必要がある。
まず試算を簡単にするため、東北電力管内においては、東京電力管内と同様の事態になるものとしよう(実際には、今年の夏ごろまで、生産設備の損壊に伴う生産減があるから、東電管内より大きく落ち込むはずである)。