懸命に運行される被災地路線バス、大船渡では車内を事務所代わりに

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 4月1日、悩み抜いた末に近藤さんたちは津波で破壊された営業所に戻ってきた。半壊した整備工場と、事務所の基礎が残っていた。見渡すかぎりのがれきの中にひしゃげた従業員の自家用車もあった。

市に頼んでがれきの山を片付けてもらい、4月4日から、市内6路線でバスを走らせた。被災から2カ月経った今も1台の路線バスが事務所代わりだ(写真)。「この営業所には生まれも育ちも大船渡という社員が多い。津波で家や家族を失って、仕事だけが残った。毎日バスを走らせることが社員の救いになっているのかもしれない」(近藤さん)。

4月7日の余震の際には慌てて避難したが、脳裏に焼き付いた津波の恐怖がよみがえった。地盤沈下しているため、大きな余震が来たら、再び津波にのみ込まれる可能性もある。一刻も早く安全な場所に営業所を移したいと、市に再三交渉し、やっと高台の土地を確保した。しかし「施工業者が見つからないので、着工のメドが立たない」(近藤さん)。

4月末時点、大船渡市を含め、釜石市、陸前高田市が同様の無料巡回バスの取り組みを行っている。こうした行政の支援もあり、岩手県沿岸部の路線バスは路線の回復率で67%に達した(下図)。


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