もうひとつは記事内に「ジャニーズ事務所はこうした方針をスポンサー企業に、事前に説明に回った模様」といった類の記述がいっさいないことだ。
もちろんスポンサーへの事前説明があったとしても、記事で書かなくてはならないという「決まり」はない。だが「他社が知らない事実」であれば、書きたくなるのが記者心理ではないか。それにもかかわらず記載がないのは、スポンサー経由ではないことをうかがわせる。
なぜ、普段付き合いのない日経に伝えたのか
さて、今回のスクープが「リーク」によるものだとすると、なぜ、ジャニーズ事務所は普段付き合いのない日経に伝えたのだろうか。
理由はもはや説明の必要もないだろう。日経を愛読しているスポンサーの幹部に「新生ジャニーズを漏れなく伝えるため」であり、「CMやテレビ番組への起用取りやめに歯止めをかけるため」だ。
さて、こうしたジャニーズ事務所の周到な対策は実を結び、やがて「帝国」は蘇るのだろうか。
結論から言うと、私はジャニーズ事務所の復活はないと見ている。ジャニーズ事務所がどのような再生策を取ろうが、もはや「関係ない」ほど事態は悪化しているからだ。
これから説明する心理とメカニズムは、大企業で管理職の経験がある方なら、容易に想像がつくのではないだろうか。
もし旧ジャニーズ所属のタレントをCMに起用しようとするなら、現場は何をしなくてはならないか。CMタレントの人選は、どの企業でも社長決裁案件となっている。担当部門としては「今なぜ、あえて、旧ジャニーズなのか」を社長に説明をしなくてはならない。
さらにCM放送後に新たな被害者が声をあげ、いつ、どんな火の粉が降ってくるかもわからない。決算会見や株主総会で社長が説明できるだけの材料も準備しなくてはならない。
そんな危険を冒してまで、あえて旧ジャニーズのタレントを起用しようという組織人がいるだろうか。
旧ジャニーズ所属のタレントをCMに起用する企業があるとすれば、「現在、旧ジャニーズ所属のタレントで著しい広告成果をあげている企業」か「周囲の目をまったく気にする必要のない非上場のオーナー企業」くらいではないだろうか。
いずれにせよ、ジャニーズ事務所を介さない、タレントとの直接契約を要求するだろう。テレビや広告の世界で所属タレントの価値は残ったとしても、企業としてのジャニーズ事務所はもはや「許されざる存在」になっているように思える。
そもそもCM起用タレントの人選は、「タレントイメージ調査」といった「もっともらしい根拠」をつけてはいるが、ほとんどの場合、大した根拠などないのだ。それゆえ、崩れるときは早い。
「テレビの隆盛」とともに急速に肥大化し、長く芸能界に君臨してきた「異形の帝国」は今、確実に落日のときを迎えようとしている。
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