世界が揺れた自動車産業の供給網寸断、現場の奮闘で着実に復興


 「震災の影響はどうか。製品在庫はどれぐらいあるのか」。日産いわき工場から南西へ車で約30分。ここに震災後、日本の自動車メーカー各社から連日のように問い合わせが殺到した工場がある。

自動車部品や建物金具などを手掛ける中堅メーカー、ムラコシ精工の勿来工場。同工場ではブレーキ部品(ブリーダースクリュー)を中心に製造している。

同社は自動車メーカーにとって、2次サプライヤー(調達先)にすぎない。それでも問い合わせが殺到したのは、シェアの高さゆえだ。ブリーダースクリューはブレーキオイルのエア抜きなどに使われるが、同社の国内シェアは約7割。トヨタでは国内生産される全車に採用される。

まだ道路事情が悪い中、納入先の担当者が同社を連日訪問した。支援物資として、表面処理に必要な水を計50トン提供したメーカーもある。トヨタの社員も二度、同社を訪れている。実は、直接取引関係のないトヨタの社員はこれまで同社のことを知らなかった。調達が滞って初めて、同社の存在が浮上した。

幸い、勿来工場には致命的な被害はなく、震災から1週間後の19日から稼働を再開した。最終のメッキ加工では委託先が被災したため、別の委託先を探し出した。同社では生産設備の多くを内製化しており、それが早期復旧につながった点もある。4月初めまでは毎日、全従業員が近くの学校で県の行う放射線検査を受けながらの作業だった。

現在の悩みは、稼働率が上がらないこと。自社の復旧が早くても、肝心の自動車メーカーの減産が続けば生産量は増えてこない。「ムダを徹底的に排除して、半年間は稼働5割でも食べていけるようにする」(村越雄介・ムラコシ精工専務)。同社の場合、もう一つの柱として、復興特需の期待できる住宅設備事業を持つことが経営面では大きい。

中国の取引先からは、放射線量に関する出荷検査を要求された。同社では線量計を5台そろえ、データ収集に備える。それでも「リーマンショックのときのほうが、先が見えず不安だった」(同)。今秋にも想定される自動車メーカーの増産に備える。

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