ただ、こうした今回のGDP見通しの修正は、6月時点では景気後退で早期利下げを想定していたメンバーの多くが、景気後退シナリオを撤回したことでほぼ説明できる。
であれば、2024年以降の政策金利見通しの修正は、ここ数カ月で進んだアメリカ経済への楽観見通しの帰結であり、新たなタカ派材料とは言い難い。経済が失速せずインフレ率も落ち着いていくとFRBが自信をやや強めたのであれば、それを先読みしていた株式市場にとってネガティブではないと位置付けられる。
また、原油価格の代表的指標であるWTI先物価格が7月初旬から上昇、1バレル=90ドル台を大きく突破、短期間で約20ドルの大幅上昇となっている。これが、インフレの再加速をもたらし、長期金利上昇を後押しする要因になると懸念されているとみられる。
インフレが落ち着く中での長期金利上昇は市場にプラス
ただ、グローバルなインフレをもたらした2008年や2022年時と比べれば、2023年夏場の原油価格の上昇率はかなり限定的である。
また、最近のこうした原油高はサウジアラビアなどOPECプラスの減産という供給要因によって起きたが、原油以外の銅先物価格など、商品市況の多くはほぼ横ばいで推移している。2022年末から製造業の調整局面が続いている中で、川上の価格上昇をきっかけに、アメリカでのインフレが再加速する可能性は低い。
今後のインフレを考えるうえでは、原油価格上昇という外的要因よりも、アメリカ国内の経済やインフレ動向の趨勢がより大きく影響する。 すでに、これまでの利上げによる長期金利上昇の影響によって、同国では経済活動をより抑制するフェーズ(段階)に入っている。
先述の通り、すでに6月からはコアインフレ率は落ち着きつつある。これまでFRBの政策金利引き上げは急ピッチだったが、インフレが程よく調整されるか否かが、同国株式市場の先行きを考えるうえでは最も重要である。
そして、インフレが制御されている中で起きている長期金利の上昇は、経済成長率が高まっていることを意味する。長期金利の上昇をそう位置付ければ、2023年に反発して推移する株式市場のトレンドを変える可能性は低い。安定的な経済成長が崩れずに、世界的な株高と金利上昇が両立する状況は、2024年にかけて続くのではないか。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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