タワマン富裕層の「節税技」は相続税だけではない 下層階の住民が納得いかない「税負担」の差
ところが、実際の価格は人気の高層階ほど高い。評価額との開きは、高層階ほど大きくなる計算になる。また、タワマンは敷地に対する住戸数が多いため、低層マンションなどと比べて土地の持分割合が低くなりやすい。そのため相続税評価額が時価(市場価格)よりもかなり低くなるケースが多い。
不動産を売却した時は、その売却価格を確定申告で税務署に届ける。国税庁によると、例えば東京都内の築9年、43階建てマンションの23階の約68㎡の部屋は、1億1900万円で売却されたが、相続税評価額は3720万円と、3分の1以下だった。タワマンでなくても差は出る。福岡県にある築22年、9階建てのマンションの9階にある約78㎡の部屋は3500万円で売れたが、評価額は1483万円と、半分以下だった。
国税庁は2018年の実績に基づいて分析した。すると、評価額が実勢価格の半額以下のマンションは66%を占めた。中でも、4割以下が42%を占める。高層階ほど開きが大きくなって、合法的に使える節税なので、富裕層が「タワマン節税」を検討するのは当然といえるだろう。
ちなみに、2021年の死者数約144万人に対して相続税がかかった人の割合は9.3%と1割もいない。課税される資産がなければわざわざ借金をしてもリスクだけなので、マネをする意味はない。タワマン節税は、相続する財産が多い富裕層が、借金を作って課税される資産を減らすために行われるものだからだ。
タワマン低層階の住民には不公平な改正
この不公平な状況を変えようと、国税庁は動いた。来年の相続分から、マンションの相続税評価額を実勢価格の60%以上にする。部屋の所在階や築年数などの取引実績データをもとにした換算式で、相続対象の物件ごとに60%の理論値を算出し、従来の評価額と比べて高いほうを採用する。その根拠は一戸建ての平均が約60%であるということだ。
せっかく理論値を用いるのであれば、すべてを理論値で統一すればいいはずだが、60%を超える評価額がついている相続案件については、従来の評価額を優先する。国税庁の分析によると、マンションで実勢価格の66%を超える評価額は全体の16%以上あった。8割を超える評価額も9.5%あった。こうしたマンションはタワマンなどの低層階である可能性がある。
評価額が比較的高いマンション所有者が亡くなった場合に、相続財産が一定額を超えると相続税を課税されることになってしまう。これは逆の意味で不公平にはならないのか。
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