タワマン富裕層の「節税技」は相続税だけではない 下層階の住民が納得いかない「税負担」の差

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また、固定資産税にも同じ構図で不公平感がある。相続税であれば、資産が少ない人は関係ないが、固定資産税はマンションの所有者全員にかかる。

先述のように、相続税の建物評価は固定資産税の評価を流用している。土地には相続税路線価が使われ、公示地価の8割が目安とされるが、固定資産税にも路線価がついており、同7割が目安とされている。部屋ごとの評価額は相続税と同じように、土地と建物の合計額を専有面積に応じて割り振る。

これは、実勢価格で考えた時に、マンションの高層階住民の固定資産税負担が低層階に比べて小さくなることを意味する。

総務省もこの問題はわかっているため、2017年以降に新築されたタワマン(高さ60m超)を対象に、上層階への課税額を数%上げ、下層階を同程度下げる微修正があった。しかし、実際の取引価格をもとにした国税庁の分析は、これが焼け石に水であることを示している。しかも、対象はタワマンだけで2016年築以前には適用されない。

高層階は固定資産税を低く抑えながら相続税対策

低層階が支えている高層階だが、高い階ほど固定資産税の負担感は低くなっていく(写真:筆者撮影)

そもそも、マンションの高層階は下層階が支えているから存在できる。エレベーターも高層階ほどよく使う。それなのに、専有面積が同じだったら税額は同じでは、下層階の住民は納得がいかないだろう。高層階の所有者は、固定資産税というランニングコストを比較的低く抑えてもらいながら、相続税対策もできてしまうのだ。

今回、相続税対策では一定の効果が期待できるかもしれない。国税庁の対策は実際の取引額を基にしているので、説得力がある。いっそのこと、実際の取引データを豊富に持つ国税庁が評価をして、固定資産税のために評価額を提供すれば納得性が高いのではないだろうか。同じ道路に2つの路線価がついているのも税金の無駄遣いといえる。

政府は増税ばかり言わず、相続税と固定資産税の評価を整理してはどうだろうか。

松浦 新 朝日新聞記者

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まつうら しん / Shin Matsuura

1962年愛知県生まれ。東北大学卒業後、NHKに入局。1989年朝日新聞入社。東京本社経済部、週刊朝日編集部、特別報道部、経済部などを経て、2017年4月からさいたま総局。共著に『ルポ 税金地獄』『ルポ 老人地獄』(ともに文春新書)、『電気料金はなぜ上がるのか』(岩波新書)、『プロメテウスの罠』(学研パブリッシング)ほか。

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