神宮外苑「再開発」は行き過ぎた資本主義の暴走か 「高層ビル3棟」の建設計画に国際機関も待った!

拡大
縮小

東京都は風致地区条例で定められている規制を外苑一帯で大幅に緩和して再開発に道を開いた。さらに都は制度の趣旨が異なる「公園まちづくり制度」を適用し、「秩父の宮ラグビー場付近は公園としては未利用」と解釈して3.4haの土地を公園から除外した。

「秩父宮ラグビー場」の西側には高層ビルを建設。日本ラグビーの聖地は、移転して建て替えられる(記者撮影)

これによって現在の秩父宮ラグビー場西側に高層ビルが建つことになった。戦災で焼失した女子学習院跡に建てられた、由緒ある同ラグビー場は姿を消す。

事業者は、「神宮外苑のまちづくりは、民間事業者が所有する土地において、多くの方が利用できる広場などを整備するもの」「国や自治体等が管理する公園を整備するものではない」と強調する。

だが、近隣住民からは「空気や憩いの場はみんなのものではないか」と、憤りの声があがる。

森喜朗元首相へ秘密裏に再開発計画を説明

1951年に明治神宮の所有となった神宮外苑は、もともと国有地だった。秩父宮ラグビー場はいまも文部科学省が所管する独立行政法人の日本スポーツ振興センター(JSC)が土地建物を所有している。

冒頭の斎藤氏は、「この話をネットやSNSで発信すると、私有地に対して外からとやかく言うべきではないとか、外苑を維持するにもお金がかかるんだから、(再開発で維持費を稼ぐことは)仕方ないといった意見が寄せられる。しかし、このような考え方はまさに『魂の包摂』(※)だ」と指摘する。

※マルクスが『資本論』で論じる概念。例えば、ベルトコンベヤーを導入して、単調な作業を繰り返させるのが典型的な「包摂」。労働者は自律性を失い、資本の命令に従う従順な労働者になっていく。これを発展させて、現代のマルクス主義者は、労働の現場だけでなく資本の論理に従って生きるようになることを「魂の包摂」と呼んでいる。

神宮外苑の再開発計画が公になったのは、2013年に東京都が外苑地区の高さ制限を緩和する都市計画案の公告・縦覧を行ってからだ。その前年には東京都の副知事らがラグビー協会会長(当時)の森喜朗元首相へ秘密裏に再開発計画を説明していることも明らかになっている。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT