アラブ首長国連邦(UAE)は2020年夏に火星無人探査機を打ち上げたし、ケニアやガーナのコンピュータ科学者が人工知能の開発に果たす役割は日に日に増している。
一方でヨーロッパの科学者はブレグジットの悪影響に見舞われているし、ロシアやアメリカの国家安全保障機関はサイバー戦争に明け暮れている。
科学自体も論争に苦しめられている。2018年11月に中国の生物学者、賀建奎(がけんけい)が、ヒトの赤ん坊2人の遺伝子編集に成功したと発表して世界中に衝撃を与えた。
多くの科学者は、そのようなリスクの高い処置をヒトに対しておこなうべきではないと考えていた。しかし世界中が思い知らされたように、国際的な科学倫理規範を守らせるのはきわめて難しい。
中国政府は公式には賀建奎の研究から距離を取って、彼を懲役3年に処した。しかし早くも2021年にはロシアの研究者が、異論の多いその研究を再現しようとしている。
科学が直面している著しい不平等
倫理をめぐる問題に加え、今日の科学はかつてと同じく著しい不平等にさいなまれている。
少数民族出身の科学者がトップの地位を占める割合は人口比に対して低いし、ユダヤ人の科学者や学生はいまだに差別されているし、ヨーロッパやアメリカ合衆国以外で働く研究者は国際学会出席のためのビザの申請を却下されることも多い。
このような問題の解決に取り組むには、新たな科学史、我々の暮らすこの世界をより正確に反映した科学史が必要だ。
(翻訳:水谷淳)
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