10年ぶり利回り「個人向け国債」は買える水準か? 株や預貯金と比較、購入時の注意点とは

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では、どのようなときに国債の価格が下がるかというと、長期金利が上がったときなのである。たとえば、「新窓販国債10年」を利回り0.75%で買い、その後、程なくして長期金利が1.5%にまで上がったとしよう。

0.75%で買った国債から1.5%の国債に簡単に乗り換えられればよいが、そうはいかない。0.75%で買った債券の価格が下がり、そこで売却するとおよそ7%程度の元本割れが生じてしまうのだ。その結果、1.5%の新しい債券に乗り換えたとしても、全体を通じた利回りは当初の0.75%くらいにしかならない。

つまり、長期金利がどんどん上がるような状況では、早くに買ってしまうと低利回りで運用を長期間固定してしまう結果になる。こうしたリスクを軽減したものが変動金利型の「個人向け国債」だ。

こちらは、半年ごとにそのときの長期金利の水準に合わせて利率が改定されるので、長期金利が上がり続けていくと、それにしたがって受け取れる利息の額も増えてくる。ただし、その代償として、受け取れるのはその時の長期金利に0.66を掛けた利率である。

たとえば、長期金利1%のときなら0.66%、長期金利2%なら1.32%という具合である。長期金利の水準が高くなると目減り幅も大きくなってしまうが、買った後に長期金利が上昇しても、それなりのメリットが受けられる点に特徴がある。

財政リスクはあまり気にする必要なし

最後に、財政破綻の懸念についても少し触れておこう。日本の財政状況は数字的にはとても厳しく、一部では将来の破綻を危惧する声も聞かれる。その点についてはまず、国債は市場で取引されるものだから、投資家の信頼が失われれば、国債価格が急落する事態は十分に起こりうる。

一方で、日本が国債の利払や償還ができなくなるデフォルト(債務不履行)という状態に陥る可能性は、現状では極めて限定的と考えられる。さらに、もし想定外の悪いシナリオが続いたとしても、デフォルトは最後の最後の手段であり、そこに至るまでに様々な方策が試みられるはずだ。

たとえデフォルトの可能性が低くても、「新窓販国債」では財政懸念で国債価格が大きく下がったところで売却してしまうと元本割れが生じるというリスクがある。一方、「個人向け国債」ならば、日本国がデフォルトしない限り問題は生じない。

万が一デフォルトの可能性が高まったとしても、実際にデフォルトするまでには相応の時間的猶予があるだろうから、その間に(ただし発行1年後以降に)元本保証付で途中換金できるという逃げ道もある。したがって、「個人向け国債」に関しては、財政リスクを気にする必要はほとんどないと考えていいだろう。

田渕 直也 ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役

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たぶち なおや / Naoya Tabuchi

1963年生まれ。1985年一橋大学経済学部卒業後、日本長期信用銀行に入行。海外証券子会社であるLTCB International Ltdを経て、金融市場営業部および金融開発部次長。2000年にUFJパートナーズ投信(現・三菱UFJ国際投信)に移籍した後、不動産ファンド運用会社社長、生命保険会社執行役員を歴任。現在はミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役。シグマインベストメントスクール学長。著書多数

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