「フェアトレード農園」への投資が広がる意外な訳 開発途上国の支援から、なぜ地球温暖化対策へ?

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フェアトレード商品を買うことは、自分たちの食料を守ることにつながるという考えが広く認知されはじめたからか、イギリスではフェアトレード商品の売り上げも伸びている。

国際フェアトレード機構の調べでは、イギリスにおけるフェアトレード認証製品の推計市場規模は約3000億円と世界トップ。一方で日本はというと、2020年から2021年にかけて推計市場規模が20%増加したとはいえ金額は157.8億円と、かなりの差がある。

国際社会に押し寄せるビジネスと人権にまつわる法規制

先進国でフェアトレード市場が伸びているのには各国で広まるビジネスと人権に対する法整備の動きも関係している。欧州を中心にして進められている「ビジネスと人権に関する指導原則」をきっかけに、各国では企業の人権に対する責任を求める法律が制定されはじめた。

イギリスはすでに2015年から年間売り上げ3600万ポンド以上の営利団体や企業に対して、奴隷労働や人身取引が確実にないことを毎年声明として公表することを義務づけていた。2017年にはフランスで親会社が海外子会社やサプライチェーン上で及ぼす人権・環境に対する悪影響がおこらないよう計画書の作成・実施、有効性評価を行い、それを開示するよう義務づける法律ができた。

その後も各国で人権と環境を守るための法案が成立、今年1月にはドイツでサプライチェーンデューデリジェンス法が始まり、従業員数が一定規模以上の企業の場合、間接的な取引先を含めて、自社のサプライチェーンに関わる国内外すべての企業が人権や環境リスクにさらされないようにする報告書を作成、公表することが義務化された。

また、EUでは人権や環境への悪影響を予防、是正する義務を果たすよう指令案を発表、違反した場合、売り上げに応じた罰金や、民事責任、リスク製品の輸入禁止など、厳しいペナルティが導入される見通しだ。人権や環境に配慮した経済活動を促す法律の基準はフェアトレードラベル認定基準と見事に合致する。欧米の企業の中にはこの意味でフェアトレード認証を取得した原材料を使おうという動きも見られるようだ。

人権や環境に配慮することが求められる法案が国際社会で一般化する中、日本企業がこれを無視すれば、製品を輸出することも難しくなるだろう。日本も昨年9月に人権尊重のためのガイドラインを発表したが、発表から1年が経とうとする今でもどう対応したらいいかわからないという企業も多いのが現状だ。潮崎事務局長によれば、国連が行ったSDGsに関する調査でも、日本は環境に対しての関心は高まりつつあるが、人権に対する関心が世界と比べて非常に低いという。

「国際社会が人権や環境に関する法案を制定する中、日本ももう少し関心を高めていく必要があると思います」(潮崎事務局長)

物価上昇の折、少しでも安い商品を買いたいと思う消費者としては懐の痛むところだが、農地を守れなければ食料が得られなくなるのも本当だ。日本でフェアトレードラベル認証団体フェアトレード・ラベル・ジャパンができて30年。世界と比べて伸び悩む国内のフェアトレード商品普及だが、国際社会の人権・環境デューデリジェンスの流れの中で、市場拡大に向かう可能性はある。

気軽に美味しいコーヒーを飲み、バナナを食べる日常を守るためにも、私たち消費者も、地球を守るためのアクションの後押しを、購買活動を通して推進していく必要がありそうだ。

宮本 さおり フリーランス記者

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みやもと さおり / Saori Miyamoto

地方紙記者を経てフリーランス記者に。2児の母として「教育」や「女性の働き方」をテーマに取材・執筆活動を行っている。2019年、親子のための中等教育研究所を設立。

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