「フェアトレード農園」への投資が広がる意外な訳 開発途上国の支援から、なぜ地球温暖化対策へ?

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国際的なフェアトレード認証組織のひとつ、国際フェアトレード認証ラベルの報告によると、バナナは産品別に見たフェアトレード農家、労働者の数では全体の2%たらずだが、総生産量としては1位。フェアトレード商品の主力と言っていいほどだ。

フェアトレード総生産量2位のコーヒーも中南米で多く生産されているが、こちらも地球温暖化の影響が危惧されている。

美味しいコーヒーの代表格として世界中で愛飲されているのはアラビカ種。その生産地も温暖化の影響を強く受けており、2050年までに栽培できる農地は現在の50%にまで減少するとの予測が出ている。産地が減れば当然、豆の収穫量も減少するし、味の品質も保たれなくなる可能性があるという。

「日本は(フェアトレードコーヒーの)取引量としてはイギリスやアメリカに比べてかなり下回ります。しかし、日本は上質な豆を多く買ってくれています。日本に買ってもらうためには上質な豆を育てるようにと農家に伝えているところです」(同団体コーヒー担当Joao Mattos氏)

価格競争の中で生産国に出るひずみ

そもそもフェアトレードを知らないという人も多い日本。最近はフェアトレードが小学校の教科書に載るようになり、子どもから聞いて初めて知ったという大人もいる。

フェアトレードは、第二次世界大戦後にアメリカのNGO団体がプエルトリコの女性の生活を支援するため、彼女たちが作った手工芸品を自国で販売したのがきっかけだという説がある。その後、開発途上国の経済的自立を支える運動へと発展していく。

開発途上国の農産物の大きな取引先として、力を持っていたのが先進国だ。例えばコーヒーの場合、価格はニューヨークなどの先物取引市場で決まる。開発途上国の多い中南米でコーヒーを栽培する農園は小規模農園が多いため、自分たちだけで市場に参入することは難しい。中間業者を頼らなければグローバル市場への展開ができないのが現状だ。だが、投機の影響も受けるため、コーヒー豆は価格の高騰や急落が激しい。そのしわ寄せを農園が受ける形になっていた。

豆を安値で買いたたかれた農園では、安く大量に生産するため、安価な農薬を使わざるをえなくなるという事態もおきた。だがこの選択が農地を荒らすことにつながる。また、土壌だけでなく、そこで働く人々の健康にも影響を及ぼしてしまう。

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