拡大BRICSに世界戦略の軸足を移行する中国外交 グローバルサウスとの経済協力を推進

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ロシア、ブラジル、アルゼンチンをはじめ拡大BRICS加盟国は、対外貿易決済を人民元および自国通貨決済に切り替える動きを加速しており、これらの国では脱米ドル化が進みつつある。

ある経済専門家は、「ペトロダラー体制」の変革の展望について「多極化した世界へと10年かけて進んでいくこと」になり、「恐らくドルとユーロ、中国人民元がそれぞれ米州と欧州、アジアで支配的な通貨となる世界」が到来すると予想する。

第2にインドを除く大半の加盟国が中国の「一帯一路」協力国であり、不動産不況やデフレ経済入りの危険性に直面する中国経済にとり、新たな需要喚起というメリットになる。

そして第3に、アメリカが仕掛ける経済デカップリングの中で、半導体生産や電池生産に必要な鉱物資源に恵まれたアフリカ・中南米諸国の加盟によって、中・長期的には半導体の自国生産体制の基礎になるだろう。

ここで強調したいのは、中国は拡大BRICSを欧米中心の国際秩序への対抗軸として意識しつつも、アメリカ中心の現行経済システムの中でさらに高い地位を占めようとしている点だ。「アメリカン・スタンダード」を「チャイニーズ・スタンダード」に変えようとしているわけではない。米中の戦略争いを「覇権争い」ととらえるのは誤りだ。

共通項は「恨み」

GS諸国の影響力増大について、「彼らに共通の主張があるわけではない」という「上から目線」の評価があちこちで聞こえる。だがイギリスの『フィナンシャルタイムズ』紙のジャナン・ガネッシュ記者は「多様なBRICSの国を結びつけている共通点があるとすれば、それは『恨み』だ」と読み解く。

国際政治を動かすモチベーションが、日本語ではネガティブな意味合いが強い「恨み」とすることに驚いてはいけない。拡大BRICS加盟国のすべてが、欧米日列強の植民地支配と侵略の被害体験を共有する。「反植民地主義」は決して古い主張ではない。GS諸国を団結させ、先進国への経済的依存を低減させる大きな効果すらある。

ガネッシュは続ける。「過去の屈辱に対する鬱憤だ。そして、政治と人生を突き動かす力として、恨みはあまりにも過小評価されている」「ソ連時代から縮小した帝国となりルサンチマンを抱えていることを知らずして、現代ロシアは理解できない」。この意見に同感だ。

岡田 充 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おかだ たかし / Takashi Okada

1972年共同通信社に入社。香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員、論説委員を経て、2008年から22年まで共同通信客員論説委員。著書に「中国と台湾対立と共存の両岸関係」「米中新冷戦の落とし穴」など。「岡田充の海峡両岸論」を連載中。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事