拡大BRICSに世界戦略の軸足を移行する中国外交 グローバルサウスとの経済協力を推進

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拡大BRICSの経済規模について、ブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領は「GDPは世界の37%、世界人口では46%まで増える」と指摘した。

2022年段階のBRICS5カ国のGDP総額は26兆ドルと、アメリカのGDPの約25兆ドルをわずかに上回っていたが、加盟国拡大によって世界経済での比重が高まるのは間違いない。

首脳会議では、6カ国のほかキューバ、インドネシア、コモロ、カザフスタン、ボリビアなど40カ国超が加盟希望を表明した。BRICS5カ国首脳は、BRICSパートナー候補国のリストを、次回首脳会議までに整備するよう自国外相に指示したとされ、次回第16回サミット(2024年10月、ロシア・カザン)以降の加盟国拡大は必至だろう。

「アメリカ一極の国際秩序への挑戦」

今回のサミットで西側に最も衝撃を与えたのは、原油埋蔵量世界第1位のサウジと第2位のイランの同時加盟だった。イスラム教内で対立するスンニ派とシーア派を代表する両国は2023年3月10日、中国の仲介で関係を正常化し米欧諸国を驚かせた。

アメリカ軍のアフガニスタン完全撤退(2021年)に象徴される、アメリカの「中東離れ」の副次作用が、これほど早くしかもBRICSサミットで表れるとは、誰が想像しただろう。

『ニューヨークタイムズ』紙はムハンマド・ジャムシディ・イラン副大統領が、イランの加盟を「歴史的偉業であり戦略的勝利」と誇ったと紹介、イラン加盟を「BRICSと西側の地政学上の緊張を高める」とコメントした。

アメリカの安全保障面でのマイナスの影響についても、アメリカの同盟国であるサウジと安保の後ろ盾であるUAEの加盟は「アメリカが支配する国際秩序へのBRICS挑戦の重みが試される」と表現した。アメリカの既得権益が侵食されたという認識がにじむ。

欧米が「グローバルサウス」(GS)の存在を強く意識し始めたのは、ロシアのウクライナ侵攻に対する対ロシア制裁に、GS諸国の多くが同調しなかったことが契機だった。それ以来、「欧米vs中ロ」の対立軸から国際政治をとらえてきた西側陣営は、GS諸国の取り込みを急いできた。

しかしG7の凋落と反比例するようなBRICS拡大を見れば、アメリカ一極支配が崩れ多極化する世界秩序の実相が浮かびあがる。「G7こそが世界を主導し専制主義の中ロを孤立させている」と一面的に見なす欧米や日本政府のフィルターを通してみる世界が、いかに歪んで実相を反映していないか、国際政治へのリテラシー(読解能力)は、毎日試されている。

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