拡大BRICSに世界戦略の軸足を移行する中国外交 グローバルサウスとの経済協力を推進
中国はBRICSをどのように認識しているのか、BRICSサミットでの習演説から探ってみよう。
BRICSは中国語では「レンガ」や「金の延べ板(インゴット)」を意味する「金砖(磚)」という単語に「国家」をつけ、「金砖国家」ないし「金砖国家集団」と呼ぶ。
中国の位置づけは?
習は2023年8月23日のスピーチで、「世界は混乱と変化の新時代に入り、不確実で不安定で予測不可能な要因が増加している」と現状を論じ、BRICSの役割について、①国際的な風景を形作る重要な力、②独立した外交政策の提唱者で実践者、③外圧に屈せず他国の属国ではない―と強調した。これが総論だ。
次いでBRICSの役割について習は、①経済、貿易、金融協力の深化・開発はあらゆる国の不可侵の権利であり、少数国の「特許」ではない、②デカップリングとサプライチェーン(供給網)分断および経済的威圧に反対する、③政治・安全保障協力を拡大し平和と安寧を維持、④BRICS外相会合や安保上級代表会合を活用し、核心的利益や主要な国際・地域課題での連携強化、⑤AI研究グループの立ち上げーを各論として挙げている。
結論で習は「BRICS諸国は真の多国間主義を実践し、国連を中核とする国際システムを守り、WTOを中核とする多角的貿易体制を支持・強化、『スモールグループ』の設立に反対する」と、多極化秩序の下で、欧米の同盟強化に反対する「非同盟路線」支持を強調した。
「多くの国がBRICSファミリーに加わり、より公正で合理的な方向でグローバルガバナンスの発展を促進すべき」と、新たなグローバルガバナンスを促進する場としてBRICS拡大を主張する。
拡大BRICSにサウジとイラン、UAEの主要産油国が加わったことは、ロシアの存在とあわせ、今後のBRICSを展望するうえで意味がある。第1にウクライナ戦争に伴うエネルギー供給の逼迫の中で、原油取引を米ドルで決済する「ペトロダラー体制」の変革につながる可能性がある。
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