台湾の「現状維持」を「独立」とみなす中国の論理 「台独」と「独台」は異句同義なのか

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中国は台湾に対し「現状維持」でも「台湾独立」とみなす論理を隠さずにいる(写真・2016 Bloomberg Finance LP)

中国は、台湾の蔡英文総統の「現状維持」路線を「外国勢力の力を借りて台湾独立を画策」していると批判している。「統一」でも「独立」でもない「現状維持」は台湾の「主流民意」でもあるが、中国が分類する「台湾独立」(台独)と「独立台湾」(独台)から「現状維持」を判断すると、現状維持を「台独」の一種とみなす論理が鮮明になる。

「台独」の意味を曖昧化しているのか

中国は、蔡政権の「現状維持」路線を「台独」と断定はしていないが、「外国勢力(筆者註:アメリカを指す)の力を借りて台湾独立を画策」していると批判してきた。

この「レッテル貼り」に対し、日本でも「中国は台湾独立の定義を曖昧にし、自分に都合よく解釈しようとしている」「『中華民国は独立国家』」という立場も台湾独立と認定される」などと習近平指導部の解釈に疑問を呈する声もある。例えば、小笠原欣幸氏の<知っているようで知らない「台湾独立」の真の意味>だ。

そこで「台湾独立の定義が曖昧」であり、「都合よく解釈できるようにしている」という主張の是非を判断するには、中国側の「台独」に対する定義を確認しておく必要があろう。中国政府のウェブサイト「中華人民共和国中央人民政府」が2006年4月26日付で発表した「“台独”と“独台”」の内容から検討する。

「台独」の定義についてこの文書は「第2次世界大戦後に台湾および海外に存在し、外国勢力によって扇動され支援された分離主義の思想と運動の傾向」と位置づける。

さらにその理論的特徴として、①「台湾の法的地位は未定」「台湾は中国の領土ではなく、台湾問題は中国の内政ではない」「台湾問題の国際化を提唱」、「台湾独立」を達成するために「外国軍を呼び込む」、②「台湾文化は中国文化の一分野ではない」「台湾人は中国人ではない」との認識を広め、「台湾国家論」を提唱する、③「台湾の住民の自決と独立」または「台湾の未来におけるすべての住民の自決」と「新しい独立国家の樹立」を挙げている。

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