日本共産党が中国共産党と和解するのはなぜか 岸田文雄政権の防衛費拡大への危機感が後押し

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1998年、それまで対立してきた日本共産党と中国共産党の関係が修復した。当時の不破哲三委員長(左)と志位和夫・現委員長。ところが、2016年、再び断絶を導く事件が発生する(写真・共同通信)

尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権問題や中国の人権問題などをめぐり、「断絶状態」にあった日本共産党と中国共産党が2023年5月、和解へ向けた第一歩を踏み出した。背景には、岸田文雄政権が中国を軍事的に抑止する「大軍拡路線」が日本世論の支持を得ていることへの危機感がある。軍拡が両者の背中を押したのだ。

「中国の立場と共通」と評価

日本共産党の志位和夫委員長は2023年5月4日、在日中国大使館を訪問し呉江浩駐日大使と会談、悪化する日中関係の打開に向けた両国政府への「3項目提言」を手渡した。呉大使は提言に賛意を示し、「中国の対日政策の参考にする」と答えた。

日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」によると、志位は「両国政府に受け入れ可能な提言にするとともに、(日中関係を)前向きに打開するうえで実効性のある提言にした」と呉に説明。さらに両党関係について、「さまざまな見解の違いがあり、その立場に変わりはないが提言の中にはすべて入れなかった」と述べた。

これに対し呉は、同党が日中関係の悪化を憂慮している姿勢を高く評価すると回答。「提言は全体として中国政府の立場と共通する方向性が多い」と評価した。

志位が中国大使館を訪れ大使と会談するのは2012年9月以来。会談は日本でも短く報じられたが、両党が2016年以来対立して断絶状態にあった事情を知る人は少ないはずだ。

提言内容は、①日中双方が「互いに脅威とならない」とした2008年の「日中共同声明」に反する行動をとらず合意を誠実に履行、②尖閣問題については2014年の日中両政府の「4項目合意」を踏まえ、「対話と協議」を通じて問題解決を図る、③東南アジア諸国連合(ASEAN)が提唱した「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」を共通目標として、東アジア平和の地域協力の推進、の3項目。

志位は大使館訪問の約1カ月前となる3月30日、岸田首相と会談して同じ提言を申し入れている。岸田は、①「互いに脅威とならない」との合意は大事な原則であり、日本政府も維持、②AOIPは日本政府も支持、と賛意を示した。共産党は、同日までに提言を中国側に届けたという。

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