日本企業「ジャニーズからの撤退」に感じる違和感 「タレントと直接契約」「他社への移籍」案も出るが…

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取引先に対して踏み込んだ提言を行っている点は評価できるが。他の事務所に移籍するかどうかはタレント自身が判断すべきことであるし、事務所側にとっては、移籍は中長期的な収入を減らす要因ともなる。

移籍にも雪崩現象が起きてしまうと、ジャニーズ事務所の経営が立ち行かなくなっていく可能性もある。そうなれば事務所に残る(残らざるをえない)タレントへの影響は避けられず、タレントたちにも結果的に重い責任を負わせることになる。

ジャニーズに”甘い対応”をさせたのは誰か

スポンサー企業、間に入る広告代理店などは、故ジャニー喜多川氏の性加害を知りながら、見て見ぬ振りをして所属タレントを広告に起用し続けていたのではないか? という意見も少なからず出ている。

筆者自身の体験で言えば、この問題が明らかになる前に、スポンサー企業、広告代理店の人たちと話しても、業務の中でこの件については話題になったことはなかった。飲み会や休会時間にゴシップネタとして話題に上がることはあったが、大半の人は「うわさでは聞いたことがある」「都市伝説でしょ」といった反応で、本件が事実だと信じている人、真実か否かを明らかにすべき深刻な疑惑であると思っている人は、私が知る限りはいなかった。

「見て見ぬ振りをしていた」というよりは、「見ようともしていなかった」というのが実態だ。たしかに、メディアの報道こそ少なかったが、書籍や雑誌、ネット上の情報を集めれば、加害行為は都市伝説などではなく、十分にありうる事実でないかと、もっと疑うべきだっただろう。

今年3月にBBCが「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」を放送し、性加害問題が発覚してからもう半年になる。この間、この9月7日にやっと新旧社長登壇のもとで開かれたジャニーズ事務所の記者会見、また、そこに至るまでの対応を振り返ってみると、改めて、不十分極まりないものであったと言わざるをえない。

そうなってしまったのは、再発防止特別チームの報告にもある通り、同族企業の弊害によるものだと筆者は考えている。新社長の東山紀之氏は同族ではないが、ジャニー喜多川氏、メリー喜多川氏の側近であったとされる人物で、依然として経営陣が内輪で固められていると考えられてもしかたのない状況にある。

ジャニーズ事務所が本当に変わるためには、「外の目」と「外からの力」が必要だった。にも関わらず、ここ半年の間においても、スポンサー企業、またメディア企業は、事務所に根本的な対応を強く求めることなく、甘やかし続けてきたと言える。

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