最高益は通過点、自動車大手の"次の一手" 勝ち残りに向けた動きが活発化している

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この傾向は2015年度も変わらない。中国の減速が鮮明になるなど、市場全体の不透明感はさらに増している。特に慎重なトヨタは、世界の総販売台数を減少と見込む。

それでも三菱自動車とダイハツ工業を除く6社が増益を予想する。円安進行の一服と新興国通貨安で、富士重以外は為替が利益押し下げ要因となる想定にもかかわらずだ。外的要因に頼らずとも、一段の原価低減で利益を生み出せる収益構造ができている。

中長期を見据えた協業

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提携発表会見で握手する、トヨタ自動車の豊田章男社長(左)とマツダの小飼雅道社長(撮影:風間仁一郎)

こうした状況下、日産の決算発表の4時間後、トヨタの豊田章男社長とマツダの小飼雅道社長が記者団の前で、がっちり握手を交わした。

両社は、トヨタがマツダにハイブリッド車技術を供与、マツダがメキシコ工場で「デミオ」ベースの小型車を生産しトヨタへ供給を予定するなど、すでに提携関係にある。さらに今後は環境・安全技術を軸に幅広い分野での協力関係の構築を目指す。具体的な内容はこれから詰めるが、トヨタの燃料電池車(FCV)技術、マツダの低燃費エンジン技術の相互供与などが手始めになる見通しだ。

世界中で環境規制は厳しくなる一方。加えて、自動運転技術では、最先端のソフトウエア技術が求められる。規模の小さいマツダはもちろん、年間1兆円の研究開発予算を持つトヨタでさえ、すべてを自社では賄い切れない。

「かつては個別プロジェクトで提携したが、エネルギー問題など中長期目線でいろいろなことをやっていかないといけない」(豊田社長)。あえて領域を限定せず、さまざまな可能性を模索する。

相互補完の動きは近年のトレンドだ。トヨタはディーゼルエンジンやFCVで独BMWと提携。仏ルノー・日産も独ダイムラーとFCVやエンジン分野で手を組む。ゴーン社長は「戦略的な協業関係は今後も増えていく」と断言する。足元の業績が堅調でも、各社の視線は中長期での競争優位確保に向かう。

「週刊東洋経済」2015年5月23日号<18日発売>「核心リポート03」を転載)

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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