「いい子」を育てたい大人に共通する毒親資質 「子と趣味性格が一緒」と喜んでいる親は危ない

✎ 1〜 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 最新
拡大
縮小

幸い治療を通して彼は、その声が、責められてばかりきた両親とつながっていることに気づく。ずっとこの声は理性の声だと思ってきたが、ようやく、実は両親の声であったことを認識し、自分に害を及ぼすものだと理解した。

子どもは毒親にも「つながり」を求める

子どもが、精神的に未熟な親から何かを望むとき、両者の関係はこのうえなくしんどく重たいものになる。ネグレクトされてきた子どもの多くは、大人になっても、「精神的なかかわりを親から得たい」と望み続ける。親がそういうタイプではないにもかかわらず、だ。

自分が親を必要としているのか、あるいは、親を必要とする自分を親が必要としているのか。一歩引いて自問するのは、なかなか勇気のいることかもしれないが、もしかしたら、あなたの親は、子どもが何かを望めるような相手ではないのかもしれない。精神的に未熟な親は、いつ果てるともなく子どもの期待を裏切り続ける傾向がある。

Gさんの母親は、しょっちゅう不機嫌な顔で文句を言う人だった。母親に対してどんなに心を尽くしても、何ひとつうまくいかず、Gさんは母親との間に境界線を設けることにした。

ある晩、朝から母親宅に行ったGさんが、母親のためにと思ってがんばったことがことごとくうまくいかず、ストレスを溜めただけで帰ろうとしていたとき、母親がこう漏らしたという。

「会いにくるだけでいいから」

Gさんは面食らった。あんなにがんばったのに、お母さんが望んでいたのはそれだけ?

その後は、母親の言葉をそのまま受けとり、母親の心をおもんぱかって気を遣うことをやめた。するとそれだけで、母親のもとを訪れるのがつらくなくなった。

結局のところ、しっかり考えること。本当に親に何かを望んでいるのは今の自分なのか、それとも、かなわなかった子どものころの望みの名残なのか、と。

リンジー・C・ギブソン 臨床心理学者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Lindsay C. Gibson, PsyD

精神的に未熟な親のもとで育った人のセラピーをおこなう民間の病院に勤務。 親子の愛着に困難をかかえる人たちのサポートを精力的におこなっている。 女性誌に「幸福」についてのコラムを毎月寄稿し、過去に大学でも教鞭を執る。 著書『親といるとなぜか苦しい』はアメリカでの発売以来、版を重ね続けている大ベスト&ロングセラー。26カ国で翻訳出版され、「自分勝手で成長しない親」を持ったすべての人たちにとっての「回復の書」として熱烈な支持を集める。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT