幸い治療を通して彼は、その声が、責められてばかりきた両親とつながっていることに気づく。ずっとこの声は理性の声だと思ってきたが、ようやく、実は両親の声であったことを認識し、自分に害を及ぼすものだと理解した。
子どもは毒親にも「つながり」を求める
子どもが、精神的に未熟な親から何かを望むとき、両者の関係はこのうえなくしんどく重たいものになる。ネグレクトされてきた子どもの多くは、大人になっても、「精神的なかかわりを親から得たい」と望み続ける。親がそういうタイプではないにもかかわらず、だ。
自分が親を必要としているのか、あるいは、親を必要とする自分を親が必要としているのか。一歩引いて自問するのは、なかなか勇気のいることかもしれないが、もしかしたら、あなたの親は、子どもが何かを望めるような相手ではないのかもしれない。精神的に未熟な親は、いつ果てるともなく子どもの期待を裏切り続ける傾向がある。
Gさんの母親は、しょっちゅう不機嫌な顔で文句を言う人だった。母親に対してどんなに心を尽くしても、何ひとつうまくいかず、Gさんは母親との間に境界線を設けることにした。
ある晩、朝から母親宅に行ったGさんが、母親のためにと思ってがんばったことがことごとくうまくいかず、ストレスを溜めただけで帰ろうとしていたとき、母親がこう漏らしたという。
「会いにくるだけでいいから」
Gさんは面食らった。あんなにがんばったのに、お母さんが望んでいたのはそれだけ?
その後は、母親の言葉をそのまま受けとり、母親の心をおもんぱかって気を遣うことをやめた。するとそれだけで、母親のもとを訪れるのがつらくなくなった。
結局のところ、しっかり考えること。本当に親に何かを望んでいるのは今の自分なのか、それとも、かなわなかった子どものころの望みの名残なのか、と。
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