福島・飯舘村で一部施設が村外避難の例外措置対象に。特別養護老人ホーム、村内6工場など

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福島・飯舘村で一部施設が村外避難の例外措置対象に。特別養護老人ホーム、村内6工場など

計画的避難地域の指定を受けた福島県飯舘村で、政府による村外避難の例外措置が実施されそうだ。特別養護老人ホーム、工場については、現状のまま、村内にとどめるという政府決定がなされる見通しになったからだ。

特別養護老人ホーム「いいたてホーム」や村内の工場を避難措置の対象外とすることは、飯舘村が一貫して要望してきたもの。「いいたてホーム」には現在、107人の高齢者が入所しているが、避難対象となって村外へ移動させることには健康管理面で大きな懸念があった。現に、今回の被災地域では、特別養護老人ホームに入所している高齢者が他所への移動の最中や、移動直後に健康を害して亡くなるという事故が相次いでいる。

また、飯舘村には、従業員約300名の菊池製作所をはじめ、複数の工場があり、村民のみならず、近隣地域の住民にとっての貴重な就労施設となっている。これらの工場までが避難対象となれば、事実上、工場の閉鎖、雇用機会の喪失につながることは必至だった。

老人ホーム、工場の屋内での放射線量は規制水準を大幅に下回っており、近隣の自治体に避難した老人ホームの職員、工場の従業員が自動車で通勤し、屋内で作業するかぎりは健康上の懸念はないとし、同村は「計画的避難措置の柔軟的な運用」(菅野典雄山村長)を枝野幸男官房長官、岡田克也民主党幹事長など政府・与党に繰り返し要望、提言していた。ただ、これまでは政府からの回答が得られなかったため、飯舘村ではいいたてホームの入所者を埼玉県内の施設に移動させるという計画も一方で立てていた。

政府は、早ければ17日午後にも、いいたてホームと村内6工場を対象にした例外措置の正式な判断を下す見通しだ。そうなれば、高齢者の健康悪化、失業増加という、原発事故から発生する二次被害を幾分かは食い止めることができるだろう。
(浪川 攻 =東洋経済オンライン) 

写真:5月8日、岡田克也民主党幹事長に要望する菅野典雄村長と、三瓶政美いいたて福祉会施設長


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