不安にとらわれず"しなやかに"生きるススメ 「心の言葉は、ときに有害」だからどうする?

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収縮ではなく、拡張。緊張ではなくリラックス。そんなふうに自分を導くのがアクセプタンスです。

「好ましくない感情や思考に居場所なんかつくってしまったら、好き放題にされちゃうんじゃないの?」と思うかもしれませんね。

でも、その心配は無用です。

先ほどからお話ししているように、戦えば戦うほどマインドさんも応戦してきます。その思考から離れられません。いつまでも終わらない綱引きのようなものです。

嫌な感情や思考との“綱引き”から手を引く

綱引きを終わらせるには、どうすればいいでしょう?

相手が自陣になだれ込むまで引っ張り続けるしか方法がないと思い込んでいませんか? それこそフュージョンしている状態ですね。

もっといい方法があります。綱から手を離すのです。パッ、とね。

マインドさんたちはそのまま後ろに倒れてしまうでしょう。壁にぶつかり、座り込み、怒って文句を言います。

でもあなたは気にしなくていいんです。

「ごめんね。でも疲れたから休憩。そこに座ってていいよ」と彼らに居場所を与え、マインドさんとのつまらない綱引きよりも、もっと価値のある何かをすればいいのです。

先ほどの「着ぐるみ」の例でいえば、脱いだ着ぐるみはたたんでおいておきましょう、ということです。

着ぐるみを脱いだことで、あなたが座っている椅子には少し余裕が生まれたはずです。そこにたたんだ着ぐるみをおいておけばいいんです。

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着ぐるみを丸めて燃えるゴミに出してしまえばもっと安心できるかもしれませんが、この着ぐるみは捨てても捨てても戻ってきてしまうんです。

想像すると、ちょっとホラーっぽくて怖いですよね。

そんなことがないように、たたんでおくのです。着ぐるみを入れておけるカゴや箱を用意しておくのもいいでしょう。そこにしまうイメージです。

気づくと再び着ぐるみを着ていることがあるかもしれません。でもまた脱いでたたんでカゴに入れておく。それがアクセプタンスです。

武藤 崇 同志社大学心理学部教授

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むとう たかし / Takashi Mutou

埼玉県生まれ。公認心理師・臨床心理士。1998年筑波大学大学院博士課程心身障害学研究科修了。博士(心身障害学)。ネバダ大学リノ校客員教授として、S・C・ヘイズ博士の研究室に所属。日本におけるACT研究の第一人者で「ACT Japan」の顧問(初代理事長)。『ACT 不安・ストレスとうまくやる メンタルエクササイズ』(主婦の友社)など、ACTに関する著書・訳書多数。臨床心理学(行動分析学)を専門とする。「心理学は、科学と実践の『二刀流』の体現がキモとなる学問である」がポリシー。

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