アラサーのための戦略的「人生相談」--夫婦関係をどうすれば修復できますか(その2)
■■第13回 夫婦関係をどうすれば修復できますか(その2)
長谷川慎一・仮名 34歳 公務員
広瀬: あなた方夫婦はまず、原因が「構造的な要因か、非構造的な要因か」を考えるべきです。構造的要因の分析が最初の軸になります。
話を聞いていると、「積み重ね」という奥さんの答えから、どうも一時的な感情のもつれではなく、むしろ「構造的」な要因によるだろうと推察されます。となると、より慎重に観察してから行動する必要があるでしょう。
また、構造的な問題だけに、その解決によって「夫婦」間の絆が強固になることも望めるはずです。これは、職場の人間関係なんかでも一緒です。いったんこじれると、修正するのは大変ですので、最初の段階でエネルギーをかけるべきです。
2番目の分析の軸は、「内的要因か外的要因か」です。
もし問題が、内的要因によるものであれば、コントロールできます。一方、「構造的な要因だけど自分たちの問題じゃない」のであれば、コントロールすることが難しい。ですから、コントロール可能なところから最初に手をつけるのが常道です。
いつも原因を自分以外のものに求める人というのが、進歩せず、十年一日なのは、このポイントがわかっていないからです。
まずは、内的なもので、かつ対応可能なものに対して対策を立てて実行に移すべきです。そして、実行しても成果につながらなかったら、原点に立ち戻って、「対策がダメだったのか」「事実の把握の仕方が間違っていたのか」「原因の分類の仕方が悪かったのか」を考え直して、もう一回やり直すのです。
結局、変わるべきはあなた自身
では、実際の問題に取りかかりましょう。
まずはここに「問題の当事者(=あなた方夫婦)に関与するステークホルダー」を書き出してください。お子さんたち、ご両家のご両親、親族、友人、その他……と。大体10人強ですね。
ここまでは、「現状の把握」です。その中で「何が重要か」という問題分析がスタートし、ここで初めて「戦略の問題」になるのです。
では次に、大事な順番に3つのグループに分けてみましょう。第1グループは、絶対失いたくない人のグループです。第2グループは、できれば失いたくない人たち。第3グループは、失ってもあきらめがつく人たちです。
第1のグループに奥さんが入っているので、解決は「別れ方」ではなく、「復活」ですね。次に第3グループを見ると、奥さん側の人間関係が多いですねえ。ここに問題があるのかもしれません。
奥さんにとってはかけがえのない人なのに、第3グループに入れている人はいませんか? いますよね。ここは、問題なのかもしれませんが、問題となっている要素が一つ見えてきたのは、解決の可能性も一つ見えてきたともいえます。
次に、「内的要因」と「外的要因」の分析ですが、ちょっと話が長くなってきたので、一気に結論に進みます。
現状に問題があるとするなら、何かを変えなくちゃいけないわけですが、あなた方2人とステークホルダーの方々の一覧を眺めて、あなたにとっていちばんコントロール可能なのは誰ですか?
長谷川:やはり私自身でしょうか……。
広瀬:はい、結論出ましたね。
あなたは、これまで、奥さんがどうして変わってしまったのかに悩んで、何とか昔の奥さんに戻す方法を考えてしまっていたでしょう。それは、必ずしもできない相談ではないですが、解決の手順としては最初に取りかかるフレームではありません。
何かを変えなくてはいけないのであれば、あなた自身が変わるのがいちばん手っとり早いはずです。
そこで、質問です。あなた、自分自身を変えようと努力しましたか?
長谷川:いいえ、していません。
広瀬:でしょう。多分、自分は悪くない。何しろ、自分は結婚以来変わっていないんだから、なんて考えていたはずです。しかし、「変わっていないから正しい」と考えるのは、根本的に間違いです。
なぜなら、人間関係は「正しいか/間違っているか」という「当為」で判断すべき領域ではありませんから。そうではなく、どう折り合いをつけるか、を考えるべきです。
もし相手が、「失ってもいい」人であれば、当為で判断していいのですが、「解決に向けた尺度」がそもそも違っています。「夫婦」関係は当為では推し量ることはできないのです。
諸井薫さんが『結婚の憂鬱』という本に書いていますが、結婚直後の夫婦に聞くと「ある事」が、夫にとっては結婚後の苦痛として、妻にとっては逆に喜びの要因として挙がるそうです。
その「ある事」というのは、「いつも一緒」。これ、わかりますねえ。根本的に違う人間がひとつがいになるというのは、それだけでかなり大変なんですよ。
長谷川:ありがとうございます。かなり客観的になれたような気がします。それにしても、広瀬さんがこんなに夫婦問題に詳しいとは思いませんでした。
広瀬:詳しい理由は聞かないでくださいね。「武士の情け」という言葉をご存じであれば……。
1955年生まれ。東京大学法学部卒業。80年、電通入社。トヨタカップを含め、サッカーを中心としたスポーツ・イベントのプロデュースを多数手掛ける。2000年に電通を退社し、スポーツ・ナビゲーションを設立。その後、独立行政法人経済産業研究所の上席研究員を経て、04年にスポーツ総合研究所を設立し、所長就任。江戸川大学社会学部教授を経て、多摩大学の教授として「スポーツビジネス」「スポーツマンシップ」を担当。著書に『Jリーグのマネジメント』『スポーツマンシップ立国論』など。現在東京と大阪でスポーツマネジメントスクールを主宰し、若手スポーツビジネスマンを育成している。
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