串カツ田中、「新規出店が急ブレーキ」の深刻事情 年間出店計画数の半減を迫られ拡大戦略出直し

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DX(デジタルトランスフォーメーション)による、少数のスタッフで運営できる営業体制の構築も急ぐ。その施策の一つが、店舗のオペレーションを管理するアプリ「V-Manage」だ。飲食業界向けのプラットフォームを運営するインフォマートと設立した合弁会社Restartz(リスターツ)で独自開発し、2022年11月に投入した。

串カツ田中HDはV-Manageを今年3月、直営で展開する全店舗の155店舗(当時)に導入した。これにより、複数の店舗を管理する「スーパーバイザー」は、店舗に直接行くことなく業務の進捗具合などを確認することが可能になった。

店舗で働く社員やアルバイトもアプリを使用することで、その時点で必要な業務を確認することができる。業務のやり方がわからない場合には、タブレット端末でマニュアルを閲覧することもできる。

正社員はアルバイトやパートへの教育や指導にかける時間を減らせる。リスターツの箱崎竜太郎代表は、「飲食店では店長によって店舗の運営方法が異なることがよくある。アプリを使えば運営方法が統一されるので、店長の交替や社員の不在時にも効率的に運営することができる」と話す。

串カツ田中HDはリファラル採用や店舗運営効率化に向けたDXを進めるが、まだ道半ば。実際、今期は出店数を拡大するだけの体制を整えることができず、出店計画が遠のいた。来期以降も新規出店を継続する意向だけに、新たな施策の効果をどこまで発現できるか、注視する必要がある。

串カツ田中の課題は業界全体の課題

人手不足は同社に限った話ではなく、業界全体の問題だ。「コロナ時期を除いてここ数年は、人手が足りていた時期なんてありませんでしたからね」と、飲食店関係者は口をそろえる。

帝国データバンクが飲食店を運営する全国約100社に実施した調査によると、今年7月に「正社員が不足している」と回答した飲食店の割合は66%を超え、コロナ前の2019年あたりと同程度の水準まで上昇している。

飲食店の人手不足感

同調査では、7月に「アルバイトやパートといった非正社員が不足している」と答えた飲食店が83%を超えた。コロナ禍の時短営業などで一時的に不足は解消されていたものの、経済活動の再開でコロナ前と同水準に戻ってきている。

足元では出店に必要な資材や人件費が高騰し、出店の費用もかさむ。とはいえ、さらなる成長のためには新規出店は欠かせない。今後どう人手を確保するのか、少人数で運営できる体制を早期に整えることができるのか。飲食業界が直面する喫緊の課題に、串カツ田中も直面している。

金子 弘樹 東洋経済 記者

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かねこ ひろき / Hiroki Kaneko

横浜市出身で早稲田大学政治経済学部を卒業。2023年4月東洋経済新報社入社。現在は外食業界を担当。食品ロスや排出量取引など環境問題に関心。

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