串カツ田中、「新規出店が急ブレーキ」の深刻事情 年間出店計画数の半減を迫られ拡大戦略出直し

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出店を阻む要因となっているのが、ほかならぬ人手不足だ。串カツ田中では基本的に、店長を含めた2~3人の正社員と、複数のアルバイトスタッフで各店舗を運営している。

アルバイトについては、東京などの都心部で不足の目立つ店舗が存在する。ただ、不足する店舗には、アルバイトが充足する店舗から人員を派遣してカバーしており、店舗の営業に大きく影響するまでには至っていない。

深刻なのは、店舗運営やアルバイトの管理を任される社員の不足だ。今期の期初には66店舗の出店をぶち上げたものの、そのために必要な肝心の社員が「30〜40人ほど足りていない」(串カツ田中HDの中堅社員)という。

社員の採用は順調に推移しており、年間30〜40人ほどの採用ができている。しかし、離職者が出ることもあり、出店に十分な人手は確保できていない。

同社はここのところ、より少人数で運営できる体制を模索してきた。これまでは通常1店舗に2~3人の社員を配置してきたが、2店舗に3人の配置でやりくりできるように取り組んでいる。ところが、「現在の店舗数だと、近くのエリアでうまく回せているが、同じエリアの中で新たに店舗を増やすと社員が足りず回らなくなってしまう」(前出の中堅社員)。

「出店の計画がそもそも過剰なのではないか」。ある飲食業界関係者は冷ややかに語る。この業界関係者は飲食チェーンの新規出店について、「年間30〜40店舗を出店するとなれば、現在は人の確保が非常に難しい」と指摘する。

飲食店は賃金が安いだけでなく、立ちっぱなしの労働環境が働き手から敬遠される傾向にある。そもそも人材の流動性が高い業界であり、厚生労働省の離職率に関する調査では、2020年の宿泊業・飲食サービス業における新規学卒就職者(大卒)の3年以内離職率は50%を超える。

DXによる効率化を急ぐ

もちろん、串カツ田中も手をこまねいているわけではない。

目下、社員の採用で力を入れるのが「リファラル採用」(社員の紹介や推薦による採用)だ。とくに、店舗で働くアルバイトを社員として登用するケースが多い。「新卒で採用した社員に比べて、(アルバイトやパートからの採用のほうが)定着率は高い」(坂本社長)という。

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