高価すぎるアップル「Vision Pro」に勝つ意外戦略 中国企業の完璧を求めすぎない「見切り発車」
成嶋:はい。その結果、ユーザー1人ひとりの行動が最適化され、真のユニバーサルデザインが実現しているといえます。
尾原さんと藤井保文さんの著書『アフターデジタル』(日経BP)では、オンラインが存在しない時代の生き残り方として「バリュージャーニー」を提唱していました。いかによい製品を提供するかにフォーカスした「バリューチェーン」から、ユーザー目線でいかによい体験を提供し続けられるかという「バリュージャーニー」が、これからの競争原理になると。その「バリュージャーニー」を、このARグラスはまさに体現していると思ったんです。
尾原:おっしゃるとおりで、ユーザーが次に求めていること、期待していることをコンシェルジュのように先回りして、「次にやりたいのはこれですよね」「次にそれをやるなら、こうしたほうが便利ですよ」などと先回りしてサジェストしてあげる。いわば、テクノロジーによる「おもてなし」ですね。
「行動」が究極のレビューになる
成嶋:当のユーザー自身も、実は自分が今何を求めているのか、次にどんな行動を選択したらいいのか、よくわかっていないものです。それくらい、人間の意思決定プロセスというものは曖昧で不完全です。だから、家の外を眺めているとき、ペットを見ているときの行動データをARグラスが解析して、自動でそのユーザーに最適な提案をしてくれれば、そのユーザーのストレスも減りますよね。
尾原:つまり、究極のレビューは「行動」なんですね。例えば、歯ブラシをどう使って磨いているのかを説明せよ、と言われると多くの人はうまく説明できない。だけど、歯ブラシの動かし方をARグラスがモニタリングすると、それ自体がレビューになる。結果として、本人も気づいていなかったベストな歯磨きの仕方を簡単に教えてくれ、歯磨きという行動が最適化される。