1個1080円する「日本一のりんご」即完売の凄さ フルーツ生産者を育成するコーチの技【後編】
一方で、海外を見渡せば、日本産フルーツは東南アジアを中心に輸出だけでなく、苗や栽培技術の流出も加速している。シンガポールやタイ、マレーシアの中心市街地のスーパーでは「日本産果物」のコーナーが幅を利かせる。
代表的なメロンやシャインマスカットは韓国産4000円未満、中国産2000円程度に対し、日本産は1万円超といった相場観で売られている。栽培技術や冷凍技術、物流手段の革新も相まって、海外からのバイイング、スカウティングといった争奪戦にも、今後一層拍車がかかる見通しだ。
海外からもオファーを受ける
銀座千疋屋の舞台に立ち続ける生産者たちにとって、「日本一」から「世界一」を目指す“メジャー進出”への道は、よりリアルに感じられる。そこに集う、特に海外からの客の関心や引きの強さに、海外市場への挑戦心が喚起される。
連載1回目に登場した「山下メロン」はすでに、シンガポールのマリナーベイ・サンズホテル内にある和久田哲也シェフの高級レストラン向けに年間300玉以上を安定的に輸出。「釈迦のりんご園」の工藤さんもアジアの複数の国から技術指導のオファーを受ける。
記事で紹介した生産者たちは、技術的にも思考習慣の面においても既存の流通システムや商習慣の枠を打ち破ってきた。今後、「日本産フルーツ」の牽引役となって、農業界の新境地を切り拓いていくことになるだろう。いずれ、日本産でも、静岡産、青森産でもなく、「山下メロン」「五十嵐いちご」「釈迦りんご」の名が、世界のフルーツ市場を席巻するかもしれない。
そんな「創造的改革者」たちの伴走者となるのが石部さんだ。生産現場に足繁く通い、発掘力・対話力で他を圧倒する“看板バイヤー”を擁する老舗の「高級果物専門店」が存在することの意義は、極めて大きい。
フルーツ市場の拡大が見通せるからこそ、伝統ある老舗には、おごりも妥協も決して許されない。銀座千疋屋の姿勢と今後の展開にも、ますます注目と関心が高まりそうだ。
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