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防衛費増が招く「増税」「国債」「債務危機」3つの罠 「成長の世界システム」は終焉を迎えつつある

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  • 玉木 俊明 京都産業大学経済学部教授
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戦争は、いつもあるというものではない。たまにとまではいかなくても時々戦争になり、国債(公債)を発行して戦費を調達し、それを平時に返済する。それに対し、現在、国家予算の多くの部分を占めるのは社会保障費であり、それを減らすことはきわめて難しい。今後、世界的に老齢人口が増えると予想されるのだから、それはなおさらだろう。国家は、戦争国家から福祉国家へと変貌し、国債(公債)発行の要因が短期的な戦費から、恒常的に必要な社会保障費へと変化している。

そのような状況下でCOVID-19のような緊急事態が生じると、国は国債を発行する。したがって、国債の発行額はなかなか減らない。しかし、経済が成長しないなら、その返済は著しく困難になる。そういう事態が発生しないと、誰が断言できるのだろうか。

成長の世界システムの終わり

オランダやイギリス、そして世界中の国々が国債(公債)を発行できたのは、持続的経済成長を前提としていたからである。国債は次世代に負担を負わせるといわれることもあるが、経済成長があれば次世代の負担は少なくなる。そして彼らは、さらに次世代へと負担を転嫁する。その次の世代も負担を転嫁していけばいい。経済が成長する限りは。

日本の経済成長は人口増大よりも技術革新の寄与が大きかったという説もあるが、技術革新による経済成長は、増大する人口に支えられていたとはいえないか。今後、そう遠くない将来に人口が減少するなら、技術革新による経済成長がどの程度期待できるのだろうか。地球の資源問題を考えるなら、世界の人口増はどこかでストップし、やがて人口減少へと至るだろう。それでも、持続的経済成長を期待することができるのだろうか。

最近の人口増が急激すぎることは、多くの人が知ることであろう。太平洋戦争期に、「1億玉砕」と喧伝されたが、日本で生まれた日本人は私の記憶では7,000万人であり、残りの人々は植民地の人々(ないしは植民地生まれの日本人を祖先としない人々)であった。それから80年間ほどで、日本人は5,000万人も増えた。少子化の問題が取り沙汰される昨今だが、戦後、日本人の数はこれほどに増えたのである。

拡大を基調とし、持続的経済成長を前提とする「近代世界システム」は、終焉を迎えつつある。それは、すぐにというわけではなくても、あまり遠くない将来におこるのではないか。そのとき、われわれは持続的経済成長を前提としない新しい経済システムの誕生を目にすることになる。そうなったとき、われわれは国債を発行できなくなるかもしれない。

戦争と財政の世界史: 成長の世界システムが終わるとき』は、そのような可能性を示唆した書物なのである。

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