「ビークロス」乗用車のいすゞが放った最後の輝き 乗用車メーカーとして先進的すぎた商用車大手

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さりげなくも複雑な局面で構成されるボディパネルは、金型プレス機で量産するのが難しかったらしく、1968年のデビューから4年間は多大な手作業を伴ったという。これらは“ハンドメイドモデル”と呼ばれ現在でも珍重されている。

1981年までの13年間における117クーペの総生産台数は8.5万台にすぎないが、旧車趣味の世界で人気は高く、残存率は極めて高いといわれる。後継車の初代「ピアッツァ」とともに、ジウジアーロのオリジナルデザインを損なわずに市販まで漕ぎつけた好ましくも珍しい例である。

初代「ピアッツァ」のデザインも秀逸だった(写真:いすゞ自動車)

トヨタ「カローラ」やニッサン「サニー」のライバルであった小型乗用車「ジェミニ」も忘れ難い。1974年デビューの初代はGMのグローバルカー構想に基づく世界戦略車で、オペル「カデット」やシボレー「シェベット」との姉妹車であった。

販売面においてカローラやサニーを上回ることはなかったと記憶しているが、欧州風情のスタイリングは評価が高かった。また、独自のツインカムエンジンを搭載したグレードはZZ(ダブルジィ)と呼ばれ、ラリーをはじめとするモータースポーツ愛好者の支持を集めた。

FRの初代「ジェミニ」。ZZはモータースポーツ愛好者の支持を集めた(写真:いすゞ自動車)

テレビCMで一世を風靡した2代目ジェミニ

1985年に2代目が登場。パリの街中をドリフト走行するテレビCMで一世を風靡したことを覚えていらっしゃる方も多いことだろう。2代目はいすゞの独自開発で、先代の後輪駆動から前輪駆動となった。直線基調でありながらほのかな丸みを感じさせる魅力的なエクステリアは、初代ピアッツァと同様にジウジアーロの手による。テレビCMと独特な商品性が記憶に残るモデルだ。

2代目「ジェミニ」のイルムシャー4ドアセダン(写真:いすゞ自動車)

117クーペの前年、1967年に発表した「フローリアン」の後継として1983年に送り出した「アスカ(正式車名フローリアンアスカ)」は、外来語由来のカタカナ車名に占拠されていた日本の市場に一石を投じた。アスカとはむろん飛鳥のことである。

飛鳥から車名と取った「フローリアンアスカ」。和名車名の先駆けだった(写真:いすゞ自動車)
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