債務超過→12期連続黒字の「農園」が変えたこと 「子どもが継ぎたくなる」農園経営の8カ条
個人的なことは会社に持ち込まず、法人と個人をしっかり区別し、お互いに不満を持たないように気をつけています。父、私、弟はそれぞれ会社から離れた場所でそれぞれの家族と暮らし、仕事とプライベートを分けられていることもいい関係を維持できている要因です。
さくらんぼの収穫期間を大幅に拡大
「矢萩式農業経営とは?」と問われれば「外部環境と自社評価を客観的に判断し、強みを最大化するため、変化と工夫を繰り返し、よりよい仕組みを構築すること」とこたえます。そして、農業経営で日頃から特に気をつけていることが次の8カ条です。
1. 固定観念や既成概念を打ち破る
果樹農家、さくらんぼ農家の常識や固定観念を壊してきました。
当社の栽培面積は約10ヘクタールですが、その6割の6ヘクタールがさくらんぼです。1300本30品種のさくらんぼを育てています。早く収穫できる温室栽培をはじめたり、遅くまで収穫できる品種を導入したりして、通常30日だった収穫期間を60日にしました。また、結実不良の原因になる晩霜からさくらんぼを守るため、散水氷結法というシステムを取り入れています。
収穫期が短く、収穫量が不安定で、しかも日持ちがしないさくらんぼ栽培。あえてそこに特化することで経営の強みにしています。
2. ヒントは顧客の中にある
顧客分析を行ってから次の一手を打ちます。評価は内部でするものではなく、外部がするものです。SNSなどのクチコミを定期的にチェックしてお客様の生の声を仲間と共有し、商品やサービスの改善につなげています。
3. アンテナを高くして最新情報をいち早くキャッチする
知らないと損をする時代です。農業や観光など自社に関連する情報はいち早くキャッチできるようにしています。国、県、市の政策や補助金など自社にプラスになる情報をキャッチして適切に処理できる能力を養っています。ボトムアップで情報や意見を集め、素早く判断し、トップダウンでチームを方向付けしています。
4. +(たす)じゃなく×(かける)こと
多くの方と連携して商品をつくったり、事業を行ったりしています。連携することは「たす」ことではなく「かける」ことです。「かける」ことで思いもよらぬ結果が出ることがあります。「農福連携」は、農業×福祉の連携です。
当社では3人の障がい者が働いています。農業には単純作業の繰り返しが多く、彼らが輝ける場所がたくさんあります。きっかけは、義弟が障がい者だったことですが、山形県の農福連携推進員より近隣の就労継続支援B型施設と自立訓練・就労移行支援施設を紹介していただき連携が深まりました。私が農福連携技術支援者(農林水産省認定)になり、社内に障がい者を受け入れる環境をつくりました。
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