慶應高は、高校野球のリーグ戦である「Liga Agresiva」の参加校だ。このリーグ戦の特色は、野球をするだけでなくスポーツマンシップを学ぶ「座学」があることなのだが、慶應高の選手は、この講義内容を完璧に理解している。甲子園で活躍している慶應高の選手に「スポーツマンシップ」について質問すれば、すらすらと明快に説明してくれるはずだ。
今回の甲子園では、慶應高の長髪が話題になったが、実は慶應では数十年前から長髪であり、今さらそれを話題にするまでもない、当たり前のことなのだ。
日吉台のグラウンドに取材に行くと、選手たちが気さくに声をかけてくれる。
「どこから来られましたか?」「今日は何の取材ですか?」
大声で「おっす」しか言わない他校の選手とは違い、長髪でもあって、大人びた雰囲気がする。
森林監督は「せっかく来てくださったのだから、きちっと対応するようにしよう」と選手に常々言い聞かせているのだ。
昨年春、慶應高は、知的障害のある中学、高校の野球選手の集まりである「甲子園夢プロジェクト」と合同練習会をした。知的障害があっても、野球をすることで生きる自信をつけ、たくましくなっていく。この話が持ち込まれたときに、森林監督はこれを快諾。
それだけでなく、知的障害についての理解を深めるために、リモートの説明会を開催。練習会に参加する2年生選手が全員参加し、知的障害のある生徒や指導者と意見交換をした。甲子園夢プロジェクトについては、「知的障害者のある球児と『甲子園』を目指すワケ」や「『甲子園夢プロジェクト』が導いたある若者の一歩」で紹介した。
参加選手の全員分の感想が寄せられた
選手たちは、「夢プロジェクト」の選手たちと徐々に打ち解け、守備練習や打撃練習では、しっかりサポートしていた。ベンチでは同じ野球好きの若者として笑い合い、最後は「野球をする仲間」になっていった。
筆者はこのとき、森林監督に「参加した選手たちの感想がほしい」と依頼した。数人分あれば良いと思ったのだが、森林監督は全員分のコメントを集めて筆者に送信してくれた。
そこには、当時の2年生、つまり今夏、甲子園の決勝の大舞台に立った選手も含めた部員たちが、知的障害のある若者と練習をしてどんな感想を抱いたかが、彼ら自身の筆致で書かれていた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら