培養肉のディープテックがSFを後押しするワケ インテグリカルチャーは新たな食文化を作る

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井上:なるほど、話題性抜群ですね。しかし、サブカルチャー的な訴求で社会に広がるのでしょうか。

羽生雄毅(はにゅう・ゆうき)/2010年、オックスフォード大学で博士号(化学)取得。東北大学 PD研究員、東芝研究開発センター システム技術ラボラトリーを経て、2015年10月にインテグリカルチャーを共同創業

羽生:エコシステムの中には、特定非営利法人日本細胞農業協会があります。これはShojinmeat Projectからスピンオフした団体ですが、牛や魚などの細胞を生育して食用肉を生産する「培養肉」をはじめ、牛乳・チョコレート・皮革など、多様な資源をつくる細胞農業を紹介しています。学術の見識に力を入れつつ、細胞農業や培養肉の市場や技術に関する情報収集をしています。

この細胞農業協会が設立にかかわったのが、細胞農業の業界を代表してルールメイキングを推進する、一般社団法人 細胞農業研究機構(JACA)です。

そして、これ全体を実現する物理的なインフラを作っているのが、スタートアップとしてのインテグリカルチャーなんです。

井上:サブカル、科学、ビジネス、という3つの連なりで市場に浸透する掘削ドリルのように見えます。

羽生:現実的に考えて、経済で回すところがないとダメ。かといって、経済の理論だけではすべてを動かすことはできないというジレンマがある。初音ミク的な2次創作、n次創作みたいなものが広く起こらないと、食文化としては定着しないと思います。

安くて量産できるインフラ

井上:では、それを前提にインテグリカルチャーという会社についてお聞かせいただけますか。

羽生:インテグリカルチャーは、細胞農業インフラを提供することを目的にしています。そのインフラに求められるのは、まず、汎用性が広くてどの細胞にも適用できること。そして、これは培養肉に限った話ではないのですが、とにかく安くなければ成立しません。

だから自宅でもできるぐらいの安さで、量産することでもっと効率化できる技術が必要だったんです。共同創業者の川島が持っていたアイデアが、まさにそれを実現できるような技術で、それがCulNetシステムとなった。

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