実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく新連載。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。
井上:起業当初はインターネットで画像や楽曲のコンテンツを手掛けていたそうですが、ロボットビジネスに転じたきっかけは何ですか。
ロボット単体ではおもちゃ。ITとつなぐと役に立つ
谷口:やっぱり日本独自のもので世界に挑戦するほうが楽しそうだと思ったんです。ロボットは日本のお家芸みたいなものですから。
僕はメーカーに勤めていた時に、アンチロック・ブレーキシステム(ABS)の制御などを開発するエンジニアだったんですよ。モノの設計はロボットにも共通すると考えました。とはいえ、ロボットだけだと単なるおもちゃです。インターネットにつなげれば違うものになると考えました。
井上:ロボットの技術はどうしたのですか?
谷口:たまたま、ネットビジネスで知り合った方がJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)の傘下でロボットの研究所の管理者になったんです。訪問したら人型ロボットがあった。研究だけで終わらせるのはもったいないから JSTも技術移転を進めたかったんですよ。2001年1月にJSTと契約して技術移転を受けてZMPを設立しました。
井上:ネットビジネスの経験は、ロボットのビジネスに役立ったのでしょうか。
谷口:ハードウェアを作ること自体は、自分の中ではすごく大事なことです。でも、それだけだと役に立たない。コンピューターもスタンドアロン(単独)では使えないですよね。ITとつなげて初めてサービスになる。
たとえば掃除ロボットは、ルンバのように、単独でボタンを押してこのフロアを掃除するものが多い。レストランで食事を運んでくるロボットも、レストランの中でボタンをピッピッピと押したらビュッと動くだけです。その場の作業をするだけで、インターネットにはつながっていないんですね。
だからロボットにインターネットをつなげてITを載せて、ハードとソフト、これを両輪にしてロボットを作り上げる必要がある。いわば、サービスとして展開するための「三位一体経営」ですね。
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