世界中のロボットが日本中のビルで働く未来 ZMP谷口恒は三位一体のプラットフォーマー

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谷口:そうなんです。本格的にROBO-HIのサービスが増えてきたのが2019年ぐらいですが、その時にZMPベトナムをつくりました。IT人材を大幅に増強できる体制を整えたんです。海外には優秀なIT人材が大量にいますから、採用しやすいんです。平均年齢28歳ですから若者ばかりですね。

ロボット会社って、どうしてもロボットを作ることで精いっぱいになってしまうけれど、インフラを広めていくためには別会社をつくる必要があると考えました。

井上:競合他社は、さすがにそこまで考える余裕はなかったのでしょうね。

インフラを整えなければ、ロボットは普及しない

谷口:圧倒的に先行していましたから。2018、2019年までは配送ロボットさえもどこもやっていませんでした。だから先行している我々が、やっぱり技術もあるしノウハウもあるから、インフラを整えなければ普及しないと気づいた。

その辺から何か、企業経営を超えた公共的な使命というものが僕にも生まれたんですよ。

井上:とても先進的な考え方だと思います。このプラットフォームが普及すれば、日本の労働力不足の問題を解消してくれそうですね。

ZMP 設立:2001年1月 所在地:東京都文京区 資本金:1億円 社員数:220人(グループ含む) 投資ラウンド:シリーズB (2023年1月時点)

経営学者・井上達彦の眼

エジソンは何をした人か。技術者を目の前にしたとき、私はしばしば問いかける。
「電球を発明した」と答える人も多いが、実は、電球を先に発明したのはジョゼフ・スワンである。エジソンの偉業は、電球をビジネスにして社会に普及させた点にある。
電球だけあっても使い物にはならない。ソケットがあり、スイッチがなければON/OFFできない。ヒューズがなければ火事になる。そもそも発電機がなければ電流はこない。電球ビジネスでも三位一体の技術があって、はじめてイノベーションが生まれる。
エジソンは、さらに安定的な電力供給に向けて水力発電に取り組んだ。ダム建設のためのコンクリートを開発し、電力供給のプラットフォームにも寄与した。必要な資金を得るためにマスコミや投資家を巻き込んだ話は有名だ。発明王と言われるエジソンだが、むしろ、イノベーションの王様というべきであろう。
ZMPの思い描く世界は、グローバルに通用しうるイノベーションプラットフォームである。三位一体のような技術があると、どうしても垂直統合や囲い込みの経営をしたくなるものだ。
ところが、ZMPは水平展開という発想によって、さまざまな参加者の新結合を促そうとしている。まだ、芽が出た段階に過ぎないのかもしれないが、プラットフォームビジネスは、伝統的なビジネスとくらべて2倍の効率性があるといわれる。
今後の成長が楽しみである。
井上達彦教授がディープテック16社にビジネスモデルをとことん問う連載記事はこちらから
井上 達彦 早稲田大学商学学術院教授

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いのうえ たつひこ / Tatsuhiko Inoue

1968年兵庫県生まれ。92年横浜国立大学経営学部卒業、97年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士(経営学)取得。広島大学社会人大学院マネジメント専攻助教授などを経て、2008年より現職。経済産業研究所(RIETI)ファカルティフェロー、ペンシルベニア大学ウォートンスクール・シニアフェロー、早稲田大学産学官研究推進センター副センター長・インキュベーション推進室長などを歴任。「起業家養成講座Ⅱ」「ビジネスモデル・デザイン」などを担当。主な著書に『ゼロからつくるビジネスモデル』(東洋経済新報社)、『模倣の経営学』『ブラックスワンの経営学』(日経BP社)などがある。

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