世界中のロボットが日本中のビルで働く未来 ZMP谷口恒は三位一体のプラットフォーマー

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井上:三位一体経営、何か面白そうな響きがあります。

谷口:ZMPにはハード部門があって、ソフト部門もある。そしてIT部門も別々にあるんですよ。3つともやっている会社は世の中にないんですね。
ZMPの技術的な強みは3つあって、それぞれブランドネームを持っています。

自社内にハード、ソフト、ITを併せ持つ

1つは、 IZAC(アイザック)という自動運転、自律移動の技術です。インテリジェント・ゼットエムピー・オートノマス・コンピューターの略で商標登録もしています。これは自動車はもちろん、配送ロボットやフォークリフトにも使われています。この汎用的な自動運転技術を、コンピューターとセットで自社で開発しています。

ZMPの谷口恒社長
谷口恒(たにぐち ひさし)1964年生まれ。群馬大学工学部卒。制御機器メーカーで商業車のABSの開発エンジニア、商社で技術営業などを担当した後、コンテンツ流通会社を起業。2001年にZMPを創業。2019年3月に東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程を修了、美術博士(写真・ZMP提供)

2つめは、RoboMap(ロボマップ)という、自動ロボットのためのマップです。街の中を配送ロボットが走るためには、最初に3次元の高精度のマップを作る必要があります。点群マップとかポイントクラウドとも言われます。

これは車の自動運転にも使われますが、日本政府はダイナミックマップと呼んでいますね。政府主導でいろいろな地図会社を集めてダイナミックマッププラットフォーム株式会社を設立し、自動車の自動運転用のマップを整備しています。これをZMPは自社で持っています。それがRoboMapです。

三位一体の3つめが、ロボットをサービスにしていくITです。ROBO-HI(ロボハイ)というのですが、先ほど紹介した配送ロボットをアプリにつなげて連携させる。ビルや建物の中でロボットが増えてきた時に、エレベーターでほかのロボットが乗ってきたら踊り場で待たせるとか、細い通路を2台のロボットが通る時、どちらを優先するとかを管理するための技術です。

ビルの中だけでなく、街の中でも歩道がありますよね。点字ブロックがあるところや店がいつも椅子や看板を置いているところをロボットは走ってはいけない。ロボットにどこを走らせるかを決めるんです。

井上:なるほど、三位一体ということは、社内の垂直統合によってサービスを提供しているのでしょうか。

谷口:いえ、ある意味で水平展開ともいえます。RoboMapやROBO-HIは、社会に広げるためにZMP以外の世界中のロボットにも対応しているんです。すでに実験済みで、十数社のロボットがつなげられます。

ロボットだけではありません。ROBO-HIにつなげれば、日本の全てのエレベーターとロボットを連動させることが可能になります。自動ドアにも対応しています。

なので、例えば海外から新しいロボットが来る時には我々に相談があります。街のOS(=Operating System、オペレーティングシステム)、ビルOSとして普及を進めています。

井上:ロボットからインフラへ、コンテンツプロバイダーからプラットフォーマーへの転身ですね。

谷口:そうです。ROBO-HIは、 Windowsのような汎用OSだと考えてください。ROBO-HIにつなぐとほかの会社の掃除ロボットの指示や管理もできます。

しかも、ほかの会社のロボットに勝手に何かハードウェアを付けて対応しているわけではありません。メーカーとタイアップして、メーカー保証が付いた状態で対応しています。

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