実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。

井上:悪名高きレジェンドだと伺っています。
南部:僕は一応有名なんですよ。携帯電話にガリウムヒ素(GaAs)デバイスを導入して消費電力を激減させましたし、半導体に関する世界最大の国際会議であるISSCC(国際固体回路会議)でパネリストにもなった。
世界初といわれる大成果を上げたにもかかわらずアンハッピーだったから、レジェンドと言われているらしいんですよ。悲劇のヒーローみたいな。新しいことをいろいろやったせいか、ずいぶん悪名高かったようです。
井上:なぜ悪名高いのでしょうか。
南部:いろいろありますが、例えば30年前、アメリカではコーポレートベンチャリング(社外のベンチャー企業を活用してイノベーションを起こすこと)が当たり前だったんですよ。だからパナソニックでもやろうとしたんですね。
すると事業部の人から「何でそんなばかなことやるんだ」と言われました。「本社研究部門は、他人のものを紹介するのではなく自ら開発するのが仕事だろう」と。
井上:オープンイノベーションが理解されなかったんでしょうね。
”飛べるVC爺様”と意気投合
南部:またこんなこともありました。パナソニックでは昔、一丸となって30インチのプラズマテレビが家庭の主力になると取り組んでいた。そのときに、本社の技術研究部門ではプラズマはやめて次世代の液晶か有機ELをやるべきだと言ったら、みんなから袋叩きにあいました。
当時、液晶では大型化ができないとか動画が駄目だって言われていましたが、実はライバルメーカーではもうできていることを知っていたからなんです。しかも、液晶のほうが安いし消費電力も小さい。
井上:あつれきが原因で、独立されようと思ったのでしょうか?
南部:有名なベンチャーキャピタリストとの出会いがきっかけです。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け