湿布のような半導体が工場の排熱を電源に変える Eサーモジェンテック悪名高き77歳が生む結合

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実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。

発電モジュール「フレキーナ」
発電モジュール「フレキーナ」
「飛ばねぇ豚はただの豚だ」。宮崎駿監督の名作『紅の豚』のポルコ・ロッソの名台詞である。イノベーションを起こす力があるにもかかわらず、それを自らの意思で諦めた人はただの人。そんなふうにも聞こえる。
名門パナソニックから独立したアウトロー起業家、南部修太郎さん(77歳)。Eサーモジェンテックを立ち上げ、世界初の技術でSDGsに取り組む。
その技術名は「フレキーナ」といい、まるで肩こり・腰痛向けの湿布に半導体をつけたようなモジュール部品である。これを工場の排熱菅につけるだけで、発電できるというのだ。
「省エネすると言ってもできることは尽くした。乾いた雑巾をこれ以上絞ることはできない」。こう悲鳴をあげる工場の救世主となりうるのか。今回は、若者に負けずに頑張る「おじさん起業家」に注目する。

井上:悪名高きレジェンドだと伺っています。

南部:僕は一応有名なんですよ。携帯電話にガリウムヒ素(GaAs)デバイスを導入して消費電力を激減させましたし、半導体に関する世界最大の国際会議であるISSCC(国際固体回路会議)でパネリストにもなった。

世界初といわれる大成果を上げたにもかかわらずアンハッピーだったから、レジェンドと言われているらしいんですよ。悲劇のヒーローみたいな。新しいことをいろいろやったせいか、ずいぶん悪名高かったようです。

井上:なぜ悪名高いのでしょうか。

南部:いろいろありますが、例えば30年前、アメリカではコーポレートベンチャリング(社外のベンチャー企業を活用してイノベーションを起こすこと)が当たり前だったんですよ。だからパナソニックでもやろうとしたんですね。

すると事業部の人から「何でそんなばかなことやるんだ」と言われました。「本社研究部門は、他人のものを紹介するのではなく自ら開発するのが仕事だろう」と。

井上:オープンイノベーションが理解されなかったんでしょうね。

”飛べるVC爺様”と意気投合

南部:またこんなこともありました。パナソニックでは昔、一丸となって30インチのプラズマテレビが家庭の主力になると取り組んでいた。そのときに、本社の技術研究部門ではプラズマはやめて次世代の液晶か有機ELをやるべきだと言ったら、みんなから袋叩きにあいました。

当時、液晶では大型化ができないとか動画が駄目だって言われていましたが、実はライバルメーカーではもうできていることを知っていたからなんです。しかも、液晶のほうが安いし消費電力も小さい。

井上:あつれきが原因で、独立されようと思ったのでしょうか?

南部:有名なベンチャーキャピタリストとの出会いがきっかけです。

それは僕が50歳を過ぎたころで、彼が70歳ぐらいだったと思いますね。朝食をご一緒したんですが、話が大変盛り上がりまして。

自分で言うのも何ですが、僕は最先端の技術を国際会議で発表しながら、同時にそれを3年後ぐらいに必ず市場に出して実用化していました。だいたい8割ぐらいが成功でした。

その有名なベンチャーキャピタリストも出資した案件の8割が成功だと。すごいですよね。その8割成功で意気投合したんです。

しかもその方はリスクに挑戦し若い人を育て、新しい産業を創ったということで、皆から大変な尊敬を集めているとのことでした。

南部:しかもその70歳の爺様はですね、飯食った後、さっそうと飛行機に乗ってどこかに飛んでいった。僕はかっこいいなと思ったんです。あんな人生を送りたいなと。

それで退職してベンチャーを支援する「アセット・ウィッツ」という会社を作った。女房にはすごい反対されたんですけどね。詐欺師と言われました。あなたと結婚したのはパナソニックに入ったからだと(笑)。

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