しかし結果的にはあまり思ったようにはいきませんでした。
まず面白いベンチャーがいない。金融機関の人たちも偉そうなだけで、ベンチャーをどうやって支援していいかわからない。
井上:それで、今度は支援ではなく自ら事業を立ち上げたのですか。
南部:そうです。ある時から、もう駄目だと。やっぱり自分でやったほうが面白いんじゃないかなと。自分なりのやり方でね。
たまたまそう思っていた頃、まだアセット・ウィッツの仕事として私の故郷の石川県の企業から技術調査の依頼があって。それが熱電発電の調査だったんです。
井上:そこで熱電発電との出会いがあったんですね。
芸術作品のような技術だけではダメ
南部:熱電発電のことは知っていましたけど、事業のことはほとんど知らなかった。それで半年ぐらい調査して、その時に初めて実態を知ったんですね。
おかしいと思ったのは、当時の研究開発がほとんど熱電発電の材料開発だったこと。いくら材料だけがよくても実用化なんかできるわけないと思ったんです。
私の専門は半導体です。半導体はモジュールにしなければ実用化できない。しかも、熱電発電はモジュールの両端に効率よく温度差をつけて、初めて発電し事業になる訳です。それなのに、その研究開発の形跡が少ない。
当時、モジュールといえば半導体では耐熱温度150度が常識なんですよね。ところが当時の熱電発電の研究はね、600度とか800度が中心だったんです。
しかもどういうモジュールを作っているのかと調べてみると、芸術作品のようなものです。スケルトンとか本当に芸術家が作るような。当然、実用化できるようなものはできない。コストも安くならない。
それで、携帯電話で使われていたフレキシブル基板を使えばいいと考えました。当時はもう折り曲げタイプとかいろいろあって、大量に量産もされていましたのでね。
井上:それがこのモジュール「フレキーナ」ですか。まさに肩こり・腰痛向けの湿布にチップをつけたみたいですね。
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