渋滞48kmに台風も…「お盆の高速」どう使われた? 沖縄台風直撃と大雨による新幹線混乱の陰で

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東海道新幹線がストップした場合、大阪~東京間の代替ルートとして、湖西・北陸線~(金沢)~北陸新幹線ルート、近鉄~(名古屋)~中央線ルートのほか、航空機、高速バス(夜行は直通、昼行は名古屋などで乗り継ぎ)もある。

しかし、今回はもともとお盆期間だったため、東海道新幹線から他の交通機関への振り替えを考えたとしても、他の路線のチケットも取りにくかったうえ、近鉄もほぼ全面運休、北陸線の特急も遅れが生じていた。

新幹線の復旧時間も読めず高速道路も通行止めという中では、交通機関を熟知している人でも、適切な代替ルートを取れなかったと考えられる。

近年、地球温暖化による海水温の上昇や偏西風の蛇行が、気象災害の拡大を招いており、予想を超えて交通機関に多大な影響を与えるケースが少なくない。

事前に運転見合わせを行うケースも増えてきた。写真は令和元年台風第15号、JR東日本の計画運休予告 (写真:tarousite / PIXTA)
事前に運転見合わせを行うケースも増えてきた。写真は令和元年台風第15号、JR東日本の計画運休予告
(写真:tarousite / PIXTA)

鉄道と高速道路、そして航空路は普段はライバルだが、混乱時にはお互いに連携を取って必要な人や物資を運ぶことが求められる。今回も、高校野球の応援団が試合に間に合わない、年に一度のスポーツ大会に選手が出場できないといったケースが多数、発生した。

もちろん、それ以外にも重要な約束が反故になった人も少なくないであろう。混乱の様子ばかりが放送される中で、天気予報を見て移動そのものを諦めた人も相当数いたと考えられる。

自然には勝てないが、異なる交通機関を組み合わせて、最低限移動が必要な人をサポートすることができないか。そういった考え方や情報の提供のあり方も今後、必要になるかもしれない。

同時に、外国人へのサポートも必要だろう。運休を示す紙の貼り出しや駅員のアナウンスは、ほとんど日本語だけだ。新幹線の混乱を伝える映像でも、何が起きているかわからず途方に暮れている人たちの様子が、何度か映っていた。

問われる移動の安全性と快適性

最後に、お盆期間(8月10~17日)のJRの利用状況を紹介しておきたい。

7月下旬時点の指定席の予約状況は、JR全体で2018年比92%に達していたが、実際には新幹線、在来線特急の利用者は2018年比84%にとどまっている。東海道新幹線に限れば、もっと少なかったことが想像できる。天気予報などにより、予定をキャンセルした人が少なくないことがうかがえるデータとなっていた。

8月10日に中国からの団体旅行が解禁され、すでにかなり回復しているインバウンドはさらなる増加が見込まれる。混雑と厳しい気象条件の中、鉄道や高速道路はどうやって安全かつ快適に必要な人々の移動を支えるべきか。

そうした安全性と快適性が、ますます問われることを予感させる2023年の夏であった。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、高崎経済大学特任教授、京都光華女子大学教授を歴任し、現職。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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