「埼玉限定のいちご」が高級市場に乗り出した背景 フルーツ生産者を育成するコーチの技【中編】

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高級いちごブランド「天照(あまてらす)」として、オリジナルのパフェやケーキも売り出された。今や、旬を待ち侘びるファンが期間限定の味覚をSNSで拡散する、銀座千疋屋を代表するいちごブランドの1つになった。

あまりん
あまりんを使った銀座千疋屋のパフェ(写真:銀座千疋屋提供)

長年、生協向けに一般商品の出荷をメインにしてきた埼玉産直センターにとって、高級フルーツ市場はまったくの未知の世界。1農家当たり5本の苗で始めた試験栽培から、わずか1年という短期間で切り開いた新規市場だった。その跳躍の裏には、「あまりん」の希少な価値を確実に届けたいと意気込む生産者たちと、銀座千疋屋仕入長・石部一保さんの出会いがあった。

「糖度だけじゃない。同じいちごの甘さでも、ずっしりとした奥が深い甘さ。あまりんはどうも、ほかと格段に違う」

五十嵐貞良(82)さん、淳さん(50)親子は試験栽培で初めて採れた「あまりん」の実に、これまでにない光る可能性を感じたという。

あまりん
五十嵐苺園の五十嵐貞良さん(右)と淳さん(写真:筆者撮影)

「あまりん」は2016年に埼玉県農業技術研究センターで育成された埼玉県オリジナルのいちご品種。埼玉県内の生産者団体と許諾契約を結んで苗を提供し、他都道府県や家庭菜園などでの栽培は許されていない。地域限定栽培のいちごだ。

あまりんの栽培に二の足を踏んでいた

ただ、味がいいとはいえ、それまでメインで栽培していた「とちおとめ」に比べると、1つの苗から採れる収量はその6割程度にとどまる。栽培面積を広げたところで、確実に売れるという保証はない。どの農家も新品種の扱いに二の足を踏むなか、27ある産直センターのいちご農家の中で、真っ先に「あまりん」の栽培に乗り出したのが五十嵐苺園と久米原農園だった。

「どうせやるからには、うめ~ほうがいい。どこよりも美味しいいちご作ってみて~っていう、単純な話よ。結果を出せば、みんなもついてくるだろうって」(貞良さん)

試験栽培した「あまりん」の収穫が始まってまもない、2018年1月15日、淳さんと久米原農園の久米原美幸(ヨシユキ・38)さんは採れたての「あまりん」を手に、東京・銀座の街を訪れていた。

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