中国団体旅行解禁で訪日観光客200万人増の衝撃 航空会社や百貨店は着々と準備に取り掛かる

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そうした中でついに団体旅行が解禁された。みずほリサーチ&テクノロジーズの坂中弥生・上席主任エコノミストの試算によれば中国人観光客数は従来予想より年間で200万人近く上振れする可能性があるという。

「早くても10月くらいの解禁と思っていた。予想外に早かった。われわれにとっては大きなビジネスチャンス。急いで準備に取りかかる」と男性は意気込む。

早速、増便の検討に入る

歓迎しているのは、旅行関係者だけではない。航空会社やホテルといったインバウンド関連企業はいずれも歓迎ムードだ。

ANAホールディングスの芝田浩二社長は、「訪日に弾みがつき経済の活性化につながります。相互交流促進のため、日本人の中国行きのビザ免除再開も切望します」とのコメントを発表。早速、国際線旅客数の計画を見直し、7月末時点でコロナ前の35%に当たる週62往復まで絞っていた中国便を増便する検討に入った。

中国人観光客の増加は、経済波及効果も大きい。

観光庁の調べによると、中国人観光客の1人当たりの旅行支出は33万8238円。これは35万8888円で1位の英国に次ぐ2位だ。台湾(18万円弱)やフィリピン(17万円弱)、韓国(10万円弱)といったアジア諸国・地域と比較してもかなり大きい。

この支出額は23年4〜6月のデータ。富裕層をはじめとする個人旅行客が多く、円安もあって高額消費が金額を押し上げている側面もある。今後は団体旅行客が増え、平均支出額は低下するかもしれない。だが、訪日中国人が200万人増えれば、そのインパクトは計り知れない。解禁後の訪日観光客全体の消費額は年間で2000億円上振れするとの試算もある。

そうした状況をすでに見越して、多くの百貨店が準備に取りかかる。例えば阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)。大阪・梅田の阪急本店のアテンド人員をこの8月から増員した。

アテンドの際には、事前に把握した顧客のニーズを基に売り場と連携し、商品を確保して提供。顧客の要望があれば、家電量販店やテーマパークにも同行する。

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