北海道新幹線「札幌車両基地」、設置場所の盲点 札幌駅より先の高架上に建設、旭川延伸に支障?

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苗穂工場の敷地を活用しなかった理由について担当者は、「新幹線の線路は在来線の南側に造られるので、そこから北側の苗穂工場に向かうには在来線をまたぐ形になり難しい」と、技術的な観点から説明したが、そもそも苗穂工場の敷地の活用方法についてJR北海道と考え方の相違があったようだ。

苗穂駅周辺は札幌駅から近いこともあって、再開発が活発化している。JR北海道は苗穂駅北口にあった社員研修センターをほかの場所に移転、跡地の一部にはJR北海道が不動産会社と共同で高層分譲マンションを2021年に建設した。1990年代には苗穂工場を移転し、その跡地を再開発する構想もあった。

JR北海道が2019年に策定した「長期経営ビジョン」は、不動産事業の拡大戦略の方策として「苗穂工場のリニューアル」を掲げている。広大な敷地だけに、工場を丸ごと移転しなくても、現在の在来線の実態に合わせて設備を集約すれば不動産開発などに活用できるスペースが生まれる。札幌側に新幹線の車両基地が必要だとしても、高架上に車両基地ができるなら、虎の子の苗穂工場を手放す必要はない。

延伸の可能性に影響は?

鉄道・運輸機構もJR北海道も車両基地を高架上に整備するほうが得策と判断しているのであれば、特段の問題はない。しかし、気になる点がある。札幌駅からそのまま車両基地につながるという構造では、将来の札幌からの延伸の可能性を閉ざすことになりはしないか。

札幌車両基地 構造図
札幌車両基地は札幌駅の先につながる構造だ(画像:鉄道・運輸機構)

ほかの新幹線の事例でいえば、東北新幹線の新青森側の車両基地「盛岡新幹線車両センター青森派出所」は新青森開業に合わせて設置されたが、列車は本線から分岐して車両基地に回送されるため、車両基地の存在が新函館北斗への延伸に支障になることはない。

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