そういう考えにいたったとき、若者向けサービスについてリサーチが始まった。
「絶対、この部署の中で一番、詳しい人になろう」。週末に原宿・竹下通りで若者に声をかけ、スタバ一杯をおごる代わりにサービスを触ってもらったり、SNSでたくさんの若者とつながって情報収集をしたりして、ユーザーのニーズを的確にキャッチした。この頑張りが評価され、社内MVPに選んでもらった。
糸が切れたように休職
仕事への熱意はさらに高まり、もっと期待に応えたい、と自分を追い込むようになった。「ゴールが見えないまま走り続けて、どこで休んでいいのかわからず、仕事をやり過ぎてしまって」。
ピアノのときも似ていた。「レッスンまでに課題を100%、ないしは120%ぐらいまで仕上げなければ先生をガッカリさせてしまう、と思ったら、練習しないと、とにかく不安で休めませんでした。そう考える癖が子どものころから染み付いていたのかもしれません」。
それでもピアノであれば、練習すればするほど、結果につながった。しかし数人でチームを組んで取り組む仕事でまとめ役を任されるようになると、自分の力だけではどうしようもできない壁にもぶつかった。
チームメイトと一緒に課題を解決しなければならないのに、一人で抱え込んでしまったり、チームメイトの良さや強みを引き出せなかったり。そのうえ、うまくいかないと、他人を責めてしまうような気持ちになり、自己嫌悪に陥った。
自らを追い詰める日々が続いた結果、ある朝、プツンと糸が切れ、会社へ行けなくなった。次の日も、また次の日も。結局、休職することとなった。
子どものころから、まともに休んだことがなかった。最初は何をして過ごせばいいのかわからなかったが、次第に初めて『ワンピース』のアニメを見るなど、まるで「遅れてきた子ども時代」のような日々を送った。だがスマホでニュースやSNSを見るのは、世間から取り残されているようで怖かった。話し相手も家族だけ。
このままでいいのか、焦る気持ちもあり、じっくり自己分析に取り組んでみた。すると、それまでの人生はずっと、誰かの期待に応えたい、嫌われたくない、という思いから、本当に自分がしたいことに向き合っていなかったと気付かされた。
(この記事の後編:「休職中の彼女が“ハラミちゃん”になったキセキ」)
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