「下請けイジメ」糾弾された大企業のまともな弁解 中小企業のコスト感覚の欠如も交渉を複雑に

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「大手企業=悪の巣窟」イメージがあるが…

現在、企業の調達部門のイメージは、おそらく取引先を絞りに絞って買いたたくイメージがある。「もっと安くしてください」と連呼している姿を想像するかもしれない。さらに昨今では中小企業がなかなか原材料やエネルギー、電気代などのコストを価格転嫁できないと報じられる。しかるべきコストを認めない調達部門は、悪の巣窟のように映る。

建設メーカーの調達責任者が教えてくれた。「まったくそんな感じじゃないですよ。ここ最近、調達部員で値上げ申請を門前払いするやつなんていませんよ」。では何が問題なのか。それは取引先の説明能力にあるようだ。

「たとえば、取引先が『電気代があがったから、製品価格もあげさせてください』とお越しになるわけですね。ご理解いただきたいのは、こちらも買いたたこうとは思っていないこと。でも自社の業績を負っているし、株主への説明責任もあるわけですよ。だから適切な価格で調達せねばならない。そこで取引先の見積書を見ると、まったく理解できない値上げ幅となっています」

現在、業種や製品にもよるが、企業の売上高に占める電気代のコストは2~4%程度と予想できる。たとえば100円で調達している製品があったら2~4円だ。電気代がもし1.5倍になったとすると、1~2円の値上げになる……はずである。

「そのケースですと、5円の値上げが申請され場合があるんですね。直感的にはおかしい。だから理由を聞きますよね。どういう計算で5円の値上げなのだと。すると彼ら中小企業は、工場全体の電気代がどれくらいあがったかは把握しています。でも製品一つひとつにどれだけ割り振っていいかがわかっていない。だから、『そこまで根拠はないけれど5円はあげてほしいと弊社の社長からもいわれています』と開き直られるわけです」

ここで私は中小企業にも味方をしなければいけないと思う。電気代などのコストを各製品に割り振ることを配賦(はいふ)と呼ぶ。工場には多くの設備があり、電気だけではなく産業用蒸気などを使う場合も配賦が問題になる。中小企業は細かくこの計算をするのが人員数としても余裕としても難しい。ただ概算でもいいので、全体の売上高に占める電気代コストくらいはわかるので、個別製品でもその比率を当てはめればいいと思う。

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