「そうそう。私もそう思います。だから、取引先には検証しましょうと相談します。時間はかかりません。『全体の電気代比率が3%ですね。だから該当製品に占める電気代コストは3円ですよね。だから今回の値上げ幅は5円ではなく、1.5円になりますよね』といった感じです」
これは論理的に思える。
しかし、取引先からは「これまで値上げできなかった分もあるので、5円くらい値上げしないとダメなんです」とひっくり返される。話がまとまらない。
ただかなり多くの大企業は冷静・客観的に価格を定めようとしている。なぜなら、値上げ申請を不適正に拒絶すると、社会的な批判もあるし、行政への告発もある。そこで「わかりました。ではこれまで値上げできなかった分を教えてください。両社で検証しましょう」と申し入れる。しかし、ほとんどの場合は中小企業からは定量的なデータは出てこない。
電気代はあくまで一例にすぎない。電気代だけではなく、いくつものコスト種類がある。それを一つひとつ確認するのは莫大な時間がかかる。
適正価格をどのように決めるか
よく「取引価格を適正に決めましょう」という。それに反対する人はいない。しかし何が適正か議論がわかれる。「これまで値上げできなかったから取り返させてください」と申し入れがあったと多くから聞いた。「何十年と不適正な価格で販売していたのですから」と。
しかし買い手側の気持ちはこうだ。「とはいえ、取引当初の価格は相手から出てきた見積書に載っているんですよ。仕事を受注したいから、と」「それに何十年も買い続けているものはありませんよ(笑)」。
ただし長い取引期間のあいだに原価が上昇することもたしかだろう。その分は上げればいい。ところが、ここで話が戻る。取引先から見積書の明細が出てこないのだ。明細がわからないから、ブラックボックスになってしまっている。
大手資材メーカーの調達統括者から話を聞いた。
「とはいっても、買い手の立場は弱いんですよ。けっきょくはモノが入ってこなかったらどうしようもない。ですから、結局は時間切れになったら、基本的には相手の申請通りに値上げを認めています。法外な値上げ申請だけを再交渉するくらいですね。これでも買いたたきといわれるわけですから、もう下請法対象企業とは付き合わないほうがいいんじゃないかって話しています。
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