あまりに辛辣!外国の船が「日本の港」を避ける訳 直行便の消滅が日本企業の地位低下につながる

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なお公平に追記すれば、日本が何もやっていないわけではない。寄港を増やすための施策として税金を安くしている。これは“とん税”“特別とん税”と呼ぶ。大型のコンテナ船が入出港するとする。為替の状況によっても異なるが国土交通省の報告によると、横浜港530万円、釜山港390万円、上海港310万円だった。また船舶が大型化するほど、この入出港するコストはより拡大していく。

そこで2020年より、この“とん税”“特別とん税”の一時納付額を下げている。その下げ幅は旧来の半分にいたる(なお入港のたびに納付する都度納付額は変更なし)。しかし、それでもなお説明した通り、2020年以降に寄港数が減っているため根の深さを感じさせる。

くわえて、日本は省庁が関係団体にコンテナの効率的な利用や輸送スペースの確保等について協力要請文書を発出したり、情報交換会を開催したりしている。しかしアメリカほど国のトップが大々的に動いてはいない。

また「情報交換はいいから、どこかの船舶会社にプレッシャーをかけるのが先ではないか」という声が聞かれた。輸送が困難なときに代表各社からヒアリングを募っても、“大変だ”という声が集まるのは開催前から自明だろう。

かつての日本の輝きはくすんでいる

島国である日本は輸出入貨物の約99%を海上輸送に頼っているのが現状だ。国際比較するまでもなく、相当な金額を港や海上輸送の改善に費やしていい。20年前ならコンテナ船は7000個積載が最大規模だった。しかし現在では2万3000個以上を積めるものが就航している。ただ日本では横浜港くらいしか受け入れられない。

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他国、たとえば韓国や中国は世界と商売をするために港に集中的な投資をしている。かつての日本の輝きはくすんでいる。日本の土木工事の技術は優れていると誰もがいう。海外にもその優位性を喧伝している。しかし、自国に活かせているか。

たとえば大型コンテナ船の基準で水深16メートルという目安がある。つまりそれだけの深さを必要とする大型船だ。その大きさの船が日本にどれだけ入港できるか。その深さのコンテナターミナル岸壁について人口あたりで比較すれば、シンガポールやマレーシアのほうが優位だ。

世界中が効率と利益を求めているのに対応できる港が数少ない。繰り返すが日本はほとんどを海上輸送に頼っているにもかかわらず。

私は某氏の「日本に寄与するためには空洞化の徹底が必要だ」なる発言を引用した。たしかに日本が経済的に最強の地位を確保していたら良かっただろう。ただ現実的には、日本から何かを出して、何かを受け入れる、という当然の継続が必要だったのかもしれない。

それでも当事者以外の国民も行政もさほど意識がない。さらに日本は「寄ってもらえない」国になっていく。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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