あまりに辛辣!外国の船が「日本の港」を避ける訳 直行便の消滅が日本企業の地位低下につながる

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日本の優先度はもはや高くなかった。さきの例でいえばアメリカから日本に寄るよりも、早く中国に戻して次の便として出港したほうが儲かるためだ。

そもそも日本の港を避ける抜港は、阪神・淡路大震災がきっかけとされる。神戸港にどうしても寄れなかった船舶らは釜山港を利用した。1994年に世界6位の神戸港はそこから世界順位を落としていった。2021年は73位であった。一度、避けた船舶会社をふたたび日本に振り向かせるのは容易ではない。

多数の船が日本への寄港停止を選択

なお抜港だけではなく、定期的な航路を見直す動きもある。抜港は時代の流れのなかで例外的な事象かもしれないが、定期的な航路が見直され、日本への寄港が減っている。2021年以降、日本への寄港が停止された航路を抽出してみる。

・欧州・北米航路、サービス名「FP2」横浜:18隻(2021年4月)
・欧州・北米航路、サービス名「AE1」横浜:16隻(2021年4月)
・北米航路、サービス名「HBB/AAC2/CPS」東京:6隻(2021年4月前後)
・北米航路、サービス名「EC1」東京・神戸:11隻(2021年6月前後)

以上、どれも日本の国際競争力を考えると深刻な影響を及ぼす。2021年は2000年以降でコンテナ船の寄港数は最低となっている。

さきほどコロナ禍の反動から世界、とくにアメリカの需要が伸びたと書いた。しかし日本はその流れに乗ることができず、日本発のコンテナ輸送量は世界全体の1%ていどにすぎない。主役は中国や韓国、ベトナムの港発のものばかりになった。

また国際基幹航路である大洋州、アフリカ、中南米、欧州、北米の寄港回数の合計で他国と比べてみよう。シンガポール、上海、釜山は2010年から2021年まで国際基幹航路が寄港した回数/週を数えてみると、それぞれ100回、100回、75回ほどで安定している。

しかし日本には京阪、阪神の港では2010年の段階で53回、22回と、すでに低い状況にある。この圧倒的な回数の違いだけでも驚きだが、2021年には27回、12回とほぼ半減している。

2022年は円安で資源高が話題になった。いっぽう輸出はさほど伸びなかった。それは物流だけで語れるほど単純なものではない。ただ要因の一つとして航路をあげたい。

結果、日本からアメリカに出荷しようと思えば、韓国や中国の港にまず送り、それらの国経由で輸送するのが現実解となっている。もちろん日本企業としては航路の日数が延び、予想も難しくなる。延びる日数は2、3日の場合もあるが、状況によって10~20日のケースもある。なかには70日まで延びる場合がある。

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