またコロナ禍前半に半導体をキャンセルしたのは自動車メーカーだけではない。ただ半導体メーカーとしてみれば、顧客がキャンセルして、すぐさまやはり半導体をほしいといわれてもすんなりと供給できるはずがない。むしろ半導体メーカーの反感を買った。
半導体商社も急なキャンセルが相次いだ経験から、急に必要だといわれても在庫水準をあげて半導体を供給するのが難しかった。
現場で起きていた混乱
半導体が逼迫しようとしていたとき、「2カ月以内に1年分の確定発注をお願いします」と各半導体メーカーは客先に依頼した。しかし日本の客の反応は遅かった。そもそもなぜ1年分の発注を確定しなければならないのか、数カ月先の数量もわからないのに、1年なんて予想できない……。それらは日本の客からすれば素直な反応だった。
しかし、半導体の“取り合い”状態においては決定的に遅かった。
「2カ月以内」といっても、各半導体メーカーのもとには世界中から続々とオーダーが入っていた。そのあいだに日本企業内では、半導体確保のために担当者が稟議書を書き、中間管理職、部長、役員……と無数の承認を得ていた。そしてそれぞれのプロセスでは誰も責任を取らないでいいように、細かな質問が相次いでいた。担当者がそれに対応するために、各半導体メーカーか半導体商社に質問を送って、その返答を待つあいだに時間は刻々と過ぎていった。
2カ月ギリギリのうちに返答した日本企業もあったが、それでも、半導体アロケーション(配分比率)が決まったあとだった。つまり、トップダウンで半導体の確保に動いた外国企業が確保したあとだったのだ。
その後、納期が1年先、2年先になる通知が届き、現場は大騒ぎになった。
どのような状況だったのだろうか。
半導体製造装置関連メーカーの部長が教えてくれた。
「欧米の半導体メーカーはひどかった。納期が間近なものであっても、出荷直前になって『ロットアウト(検査基準をクリアできず不良になる現象)した』といってくる。しかし実際はそんなことはない。アメリカの企業に流れていたと聞きました」
正規ルートから入手できない以上は、さまざまな方法が講じられた。2021年から2022年に企業のサプライチェーン・調達に関わった人なら、ほとんどが同じ目にあっている。モノがどこで買えるかを探して奔走していた。
「大変な時期でした。中国の商人たちが通常の100倍の値段で買っていく。10円のロジック半導体なら1000円です。それをさらに150倍の1500円でブラックマーケットに流すんです」
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