大きな胸を「小さく見せるブラ」は、このような悩みを抱える女性の、「女性としてだけではなく、ひとりの個人として見られたい」というシンプルな願いをとらえました。
この願いを実現するためには、女性性(女性らしさ)を強調せず、薄める必要があります。しかし、ここで問題が生じます。ひとりの個人として見られることだけで、女性は満足するでしょうか。ひとりの個人として見られるために、女性性は薄めつつも、すてきな女性とも思われたい。そして、大きなブラジャーは小さなものに比べて、種類が少なく、かわいいものが少ないという不満も、ユーザーにありました。
胸の大きさを気にしている女性は、「大きな胸」にばかり注目されるのではなく、「ひとりの個人として見られたい」「女性らしさも失いたくない」という、矛盾した願いを持っています。
大きな胸を「小さく見せるブラ」は、この矛盾を、胸の形を保ち、かつファッション性を保ちながら、見た目のサイズを落とすことにより解消したのです。
「矛盾=トレードオフ」を見つけるのがカギ
ビジネス成功のカギは、課題解決と言われます。人々の不満を発見し、解決するために、ビジネスマンは日夜、頭を絞っています。
しかし、この事例が示している新たな視点は、「不満を発見して終わってはいけない」ということです。
たとえば、誰かが不満を抱えているとします。では、その人の抱えている不満のうち、ひとつだけ解消することを考えてみましょう。難しいでしょうか。いや、実はかなり簡単なのです。
課題をひとつ書き出して、それに対する解決策を考えるというのは、非常に簡単です。実際、「この部屋が暑い」という課題を解決するには、「エアコンを入れて冷やす」という単純な解決策が存在します。
しかしながら、私たちが抱く課題というのは、そう単純ではありません。普通、私たちの課題には、主課題(解くべき問題)に加えて、「制約」があります。先ほどの例で言えば、「部屋が暑い」(主課題)、「でも電気代をかけたくない」(制約)、「自分であおぐのも嫌」(制約)という状況です。
これをオフィスという環境で解決するとなると、なかなか難しいことは理解いただけけるでしょう。これが「課題解決におけるトレードオフ」です。つまり、個々の不満や要望をかなえることは簡単であっても、現実に存在するさまざまな制約の下で解くことは難しいのです。
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