中国で「日本車が総崩れ」不安視される撤退ドミノ 20年前後から外資と現地の合弁企業淘汰始まる

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衰退が最も早かったのはフランス系で、仏PSAと長安汽車の合弁会社「長安PSA」は親会社2社がいずれも合弁から撤退し、2020年に宝能集団に買収され深圳宝能汽車に名前を変えた。

PSAのもう1つの合弁であり、東風汽車集団と設立した「神龍汽車」も、2016年の販売台数が60万台だったのが2022年に12万7000台まで落ちており、同年に第二工場を東風本田に売却した。ルノーと東風汽車集団の合弁「東風ルノー」は、2020年に東風汽車が販売低迷を理由に合弁から抜けた。

2022年には広汽集団とステランティス(本社オランダ)の合弁「広汽FCA」が破産を申請した。同社は生産停止、広汽集団からの融資など、広汽三菱と退潮の歩みが似ている。ステランティスと広汽集団によるもう1つの合弁でジープを生産する「GAC FCA」も同じく同年、破産を申請した。GAC FCAの広州工場は広汽集団のEV子会社に委譲されており、広汽三菱の長沙工場も同じ道をたどるとの予想が多い。

アメリカ系と韓国系も厳しい。韓国の東風悦達起亜汽車は2021年12月、東風汽車集団が合弁から撤退した。

2016年まで4年連続で販売台数が100万台を超えた北京現代は、2022年の販売が25万台に低迷。同社は2021年5月に理想汽車に工場を譲渡したのに続き、今年6月20日に中国の2工場を売却すると発表した。

フォードのジム・ファーリーCEOは、2023年1~3月期の決算説明会で中国市場への投資を減らすと言明。同社はピークの2016年に中国市場で127万台を販売したが、2022年の販売台数は49万6000台に減少し、今年は1300人の削減が報じられた。

上述の外資系ブランドの販売台数を見ると、いずれも2016~2017年がピークで、その後急速に衰退している。中国の自動車市場は2018年に28年ぶりにマイナス成長となり、2019年も縮小した。

日系は大崩れしていなかったものの…

この2年で中国企業を含む多くのメーカーが販売台数を減らしたが、日系とドイツ系だけは大崩れせずシェアを高めた。だが、2020年以降のEV化の波でテスラだけでなく新興ブランドが次々に現れ、ブランドや技術の競争軸が一変した。

「合弁」のブランド力は5年前から消失していたが、2020年前後の敗者はEVシフトに乗り遅れたメーカーでなく、そもそも基盤が強くないメーカーだったため、旧来の競争軸の強者だった日系メーカーはEV化の波を認識しつつも、ゲームチェンジの影響を読み切れなかったのかもしれない。

日系メーカーの中国市場での退潮は、規定路線になりつつある。中国での大きな関心は、日系メーカーでもまだ強さを保っているトヨタとホンダ、とりわけトヨタが中国でシェアを維持し続けられるかである。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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